2015.12.4 10:00
インドと国境を接するバングラデシュ。世界で最も貧しい国の一つといわれる。
この夏、私は厳しい環境の中で生きる子供たちの生活を追ったテレビ番組の取材のために、バングラデシュを訪れた。
首都ダッカのスラムで一人の少女に出会った。名前はモスミ、10歳。年老いた祖母と2人暮らしだ。笑顔がかわいい人懐っこい少女だ。
彼女は毎日、1人で歩いて約30分かけてゴミ山へ行く。売れるものを探し、それを売って食べものを買うためだ。車道には大型バスや乗用車が行き交い、その間をバイクと自転車が縫うように走る。交通ルールもないような道を、小さな少女がたった1人でしかも裸足で歩いていくというだけでも心が痛んだ。
「1人で怖くない?」
首をふって「ナー(いいえ)」と、モスミは答える。
ゴミ山に到着し、心が張り裂けそうになった。嗅いだことのない強烈な腐敗臭が立ちこめ、大きな水たまりにはポコポコと奇妙な泡が湧き、正体不明のガスが発生している。車で到着した私は、外に出るのを一瞬ためらった。長靴を履いた足にさえ、何か害が及ぶのではないかとの恐怖が襲ったのだ。