ロシア軍によるウクライナ南部クリミア自治共和国の掌握が着々と進むなか、米国と欧州連合(EU)はロシアに対する経済制裁を発動する構えだ。軍事衝突だけは何としても回避したいなか、兵糧攻めによる持久戦でロシアを孤立させ、経済的窮地に追い込む戦略だ。だが、ロシアは欧米の撤収要求にもまったく聞く耳を持たず、兵員を増派しクリミア駐留のウクライナ軍司令部などを包囲し投降を迫るなど実効支配を固めつつある。欧州内には経済制裁への温度差もあり、暴走を止める決め手とはなり得ないのが実情だ。
静かな侵攻で半島掌握
「現段階で、軍事行動の必要はない」。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)は3月4日の記者会見で、武力衝突なきクリミア半島の掌握に自信を示した。自治共和国を併合する可能性について「その必要はない」と否定したが、半島は事実上その支配下に置かれている。
ロイター通信によると、ウクライナの国境警備当局者は、4日未明までにロシア軍がクリミア半島東端のケルチ海峡の対岸からフェリーを使って兵員の増派を始めたと明らかにした。半島のセバストポリでは、ウクライナ海軍の司令部がロシア軍部隊や親露派自警団に包囲され、投降を迫られている。港内では配下の軍艦2隻がロシア側船舶によって封鎖された。