さらに、原発長期停止が引き起こす電力不安は、アベノミクスによる景気回復への期待に水を差す。
九電の供給力から需要を差し引いた余力は51万キロワット。気温が1度上がったり、火力発電所が1基停止したりすれば吹き飛ぶ程度しかない。
このリスクに備えようと九電は、電気料金を割安にする代わりに、緊急時に節電を要請する「スポット負荷調整契約」や、送電そのものを停止する「随時調整契約」を一部の企業と結んだ。これで40万キロワットの節電が可能とする。
だが、この一時しのぎの策は、前向きになりつつある経営者心理に、長期にわたってブレーキをかける。
経団連が4月に公表した「電力問題に関する緊急アンケート」によると、電力の供給不安・節電要請により、今後2~3年の生産活動に悪影響が出るという回答が、製造業で7割にも達した。国内の設備投資を減少させるという回答も3割以上あった。
緊急の節電要請や送電停止が頻発すれば、電気料金値上げと相まって、九州から製造業が消滅することさえ否定できない。