石油元売り最大手のJXTGエネルギーは「短期的に原油調達に影響はない」としているが、原油価格の上昇が続けば、ガソリンや化学製品の価格も上がり、物流費や原材料費の両面でコストの圧迫要因になる。ガソリン高が継続すれば、消費者が節約志向を強めて、モノが売れなくなり、企業業績を下押ししかねない。
輸出企業にとって急速な円高も気がかりだ。1ドル=1円の円高が進むと、年間営業利益に対してトヨタ自動車で400億円、日産自動車で140億円の減益要因になるからだ。日産の志賀俊之副会長は「“有事の円高”になれば、自動車など輸出産業に影響が大きくなる」との認識を示した。
地政学リスクの高まりに伴う、産油国周辺の経済の混乱にも警戒感が広がる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、イラクやカタールなど中東15カ国への日系企業の進出数は2015年10月時点で756社に上る。トヨタの中近東地域での販売台数は約60万台と世界販売の約6%を占め、日立製作所も中東地域での売り上げが1000億円前後と連結売上高の1%程度。報復なども含め、局所的な混乱が他の地域に飛び火すれば、各社の輸出や販売戦略に影響が及ぶ懸念もある。
株安も消費に悪影響
株安が進むことによる国内の個人消費への影響も見逃せない。株安になると保有する資産が目減りするだけに、“逆資産効果”で高額品の売り上げに影響が出る恐れがある。高島屋の木本茂社長は7日の決算会見で「(経済には)心理的な部分でマイナスに働く」と述べ、消費にとって逆風になるとの認識を示した。(ワシントン 加納宏幸、今井裕治)