東海道新幹線を走る車両の「全般検査」を行うJR東海浜松工場で、作業のロボット化などを進めた新ラインが完成し、1月に稼働を始めた。2010年から進めてきたこの大規模リニューアルへの投資額は同社の年間利益の2割強、約730億円にも上る。安全運行を支えるための重要なメンテナンス拠点ではあるが、巨額の資金を投じるリニア中央新幹線の建設が進む中で、「利益を生み出すわけではない部門への思い切った投資」(広報)に踏み切った狙いはどこにあるのか。
車両検査を効率化
浜松工場は今から105年前の大正元年に新橋工場と沼津工場の業務を受け継いで設けられ、蒸気機関車「D51」の製造・修繕なども行った歴史の長い工場だ。現在はJR東海社員650人と協力会社の700人が、東海道新幹線の車両検査を専門に行っている。
車両検査は、日常的な点検から大がかりなオーバーホールまで、いくつかのレベルに分かれている。
まずブレーキの利き具合などを48時間ごとに確かめる「仕業検査」、次に車輪の摩耗度や主要な機器の回路などを30日または走行距離3万キロ以内に点検する「交番検査」、1年半または60万キロ以内でブレーキやモーターなどを分解・整備する「重要部検査」がある。