鹿やイノシシなど野生動物による農林水産業や生活環境への被害が広がり、捕獲による個体数減少が推奨される中、捕獲後に獣皮を資源として有効活用しようと皮革素材加工会社や製品加工会社、デザイナーなどと産地が連携する取り組みが始まった。獣害駆除(狩猟)で得られる獣肉は食肉加工され「ジビエ料理」として人気を集めつつあるが、獣皮は廃棄される場合が多く、皮革に加工しても販路がないなど問題を抱える。環境保全のための捕獲で生じる廃棄物を資源化してマーケットを創出することで、狩猟に伴う新たな価値づくりを加速化しようとしている。
◆国産ブランド強化
捕獲された鹿やイノシシなどの獣皮を利活用しビジネス化しようというのがレザー・サーカス(東京都墨田区)だ。参加メンバーは獣皮産地、皮革素材加工会社、皮革製品メーカー、デザイナーのほか、自主企画商品を扱う小売業者を想定。国内で得られる獣皮を国内で皮革にし国内メーカーで製品化することで、国産ブランドの競争力を付ける狙いもある。取り組みは経済産業省の2015年度皮革産業振興対策事業費補助金付加価値化事業に採択された。
運営責任者を務める皮なめし業、山口産業(同)の山口明宏社長は「有害獣駆除のため狩猟し、資源にしようと皮革化に取り組んでも、活用できず頓挫(とんざ)している産地がある。一方で、国産の鹿革やイノシシ革があるなら商品素材として使いたいというブランドもある。双方が情報交換できる場が必要」と話す。豚や牛の皮なめしを手掛ける同社は08年、北海道などからの依頼がきっかけとなり、鹿やイノシシのなめし加工を受託するようになった。産地には口コミで広がり、15年は鹿とイノシシで1551枚を手掛けたが、今年は週100枚ペースで依頼があり、「産地の利活用への意識が高まっている」(山口社長)状況だ。