2015年春闘で、相場を牽引する自動車大手の労働組合がベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分として前年実績を大幅に上回る月額6000円の要求で足並みをそろえた。ベアの必要性は共通認識となりつつあるが、その水準をめぐっては大きな隔たりがある。日本自動車工業会の吉田正弘労務委員長(ホンダ常務執行役員)と、自動車総連の相原康伸会長に賃上げに対する考えを聞いた。
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□自工会・吉田正弘労務委員長
■ベア以外も手段、妥当な水準議論
--今春闘の位置づけは
「自動車業界としても賃上げに対する社会的な期待は十分理解している。アベノミクスで経済環境が上向き、超円高も是正された。収益が改善すれば、従業員に還元するのは基本的な考え方。国際競争力を維持するために原価低減を続け、高収益体質の構築に向け努力した従業員には報いたい」
--労組側は6000円のベアを要求している
「6000円は1998年以来17年ぶりの高い要求額。ベアは基本給だけでなく、手当や社会保険料などにも波及するため、総額人件費には1.66倍分の影響がある。6000円を満額回答すれば9960円の負担増で極めて大きなインパクトだ。賞与や諸手当などベア以外にも賃上げ手段はあり、どこまでが妥当かを議論する」
--どの程度のベアが妥当なのか
「支払い能力は個社ごとに違う。組合側の主張を聞きながら各社の経営実態と将来性を議論して最善の形を決めていくしかない」
--毎年ベアを実施すると業績への影響が大きい
「ベアは一度実施すれば簡単に下げられない。毎年実施できるのが理想だが、グローバルで事業展開をするなかで為替変動のリスクもある。競争力を保つため毎年真摯(しんし)な議論が必要だ」