海水を濾過して真水にする東洋紡の「膜」の存在感が中東で際立っている。塩類は通さず、水の分子だけを通す特殊な構造のため海水淡水化施設に使われているが、塩分濃度が高く、微生物が多くて膜も目詰まりしやすい中東の海水に対応して洗浄が簡単なのが人気の理由だ。シェアは中東全体で5割に上り、とくにサウジアラビアでは85%と圧倒的。100億円程度(同社推定)の中東市場は今後5年で倍増が見込まれ、同社は旺盛な需要の取り込みを進める。(中山玲子)
繊維会社の技術
「繊維会社だからこそ、誰にも真似できない膜を作ることがきでた」
東洋紡アクア膜事業部長兼機能膜事業開発部の藤原信也部長は、こう胸を張る。
雨や地下水に乏しい中東では水の確保は切実な問題だ。海水に3・5%程度含まれている塩分を「淡水化施設」で0・05%以下に下げて生活用水として利用している。
淡水化は、海水を加熱して蒸気を取り出す「蒸発法」と、水の分子は通るが、水に溶けた塩類は通さない特殊な膜を使う手法が代表的。東洋紡は、早くから「脱繊維」の取り組みとして海水を通して真水にする膜の開発に乗り出した先駆者だ。