東京電力福島第1原子力発電所事故を機に、原発施設で作業するロボット開発が加速している。日本でも世界に先駆けた技術も登場しているが、市場は実績のある大手企業や有名大学が独占し、ベンチャー企業は画期的な技術を開発しても参入は困難なのが実情。福島の事故では原子炉建屋に初投入されたロボットが米国製という屈辱を味わい、米IT大手がロボット関連企業の買収を進めているのも脅威だ。日本のお家芸といえるロボット分野の発展には優れた技術ならベンチャーや中小企業にも門戸を閉ざさない度量が必要だ。(板東和正)
SF顔負けの技術さえ…難しい
「世界に誇る技術を生み出しても、原発の作業用ロボットへの活用は難しい」
ロボットやセンサー技術を開発するベンチャー「旭光電機」(神戸市)の技術部社員は、冷めた表情を浮かべる。同社は平成24年12月、被災地など危険な場所で障害物撤去や、機材の搬送を手がける電動ドリル搭載の「人型ロボット」を開発したばかりだ。
操縦者が体を動かすことで遠隔操作できるロボットで、何百キロ離れた場所でも自在に動かせる驚異的な操作性を実現。とくに、ロボットの頭部や指先にはカメラや各種センサーなどが設置されており、ロボットの作業状況や周辺環境を視覚や聴覚だけでなく、触感までもが操縦者が装着するゴーグル内のディスプレーやヘッドホン、さらにグローブで再現できる。まさに世界的な技術者も目を丸くするSF映画顔負けの技術なのだ。