神戸市にあるスーパーコンピューター「京」が昨年9月に本格稼働してから1年がたった。計算速度の世界ランキングはことし6月時点で4位に後退したが、ずばぬけた能力に「未来を先取りできる」と産業界の視線は熱い。高精度なシミュレーションを利用し、自動車の開発や防災などさまざまな分野で着実に成果が出始めている。
理化学研究所と富士通が共同開発した京では現在、100件以上の研究プロジェクトが進む。国家戦略で優先的に割り当てられている計算以外に、一般利用と産業利用の公募には約300件の応募があった。
開発プロセスを変えると期待されているのは自動車の空力シミュレーションだ。
燃費や乗り心地を左右する空気抵抗を調べるため、メーカーは試作車に風を当てて周りの空気の流れを分析する風洞実験を繰り返す。コストが膨大なため、メーカー各社はシミュレーションでの代替を模索しているが、どこまで詳細に再現できるかが課題だった。