内閣府県民経済計算などによると、九州の雇用者報酬は関東や中部より1~2割低い。日産九州の分社化も狙いは同じ。「当面は給与体系は維持する」(日産自動車九州の児玉幸信社長)が、将来的には、地元に合わせた水準に徐々に変える方針だ。
これに加え、ここ数年は、アジアに近い立地が九州生産の魅力になろうとしている。九州地場の部品メーカーの育成が進んでいることに加え、中国や韓国からの部品を輸入し、価格競争力を高める。
日産車体九州が6月から生産を始めた商用バン「NV350キャラバン」は、使用部品の約4割を韓国や中国から調達している。日本生産の車両としてはかつてない海外調達比率だ。
トヨタ自動車九州でも「韓国の部品メーカーとの商談会を実施し、(韓国製部品採用の)機会も増える」(同社首脳)と、高級車でも、海外比率は上がる可能性もある。
海外調達比率の向上は、コスト低減の取り組みの一環。各社は空洞化を阻止し、国内の生産を維持しようと懸命だ。それでも、長引く円高が自動車メーカーの経営体力を消耗させており、海外に生産を移す車種も目立ち始めた。