日本で「唯一の成長産業」といわれたソーシャルゲーム業界が最大の危機を迎えている。収益を牽引(けんいん)してきた課金方法「コンプリートガチャ(コンプガチャ)」が全面禁止となり、ビジネスモデルの再構築を迫られているからだ。だが、業界を主導するDeNA(ディー・エヌ・エー)とグリーは訴訟合戦を続け、共同歩調を取れないでいる。今後の対応を誤れば、期待の成長産業は縮小に向かう可能性もある。
現場の交流は活発
「かっとばせー、ラーミレス!」。プロ野球セ・パ交流戦で盛り上がる5月末の横浜スタジアム。スタンドでは、DeNAとグリーの中堅社員らが身を寄せ合って、今年から参入した横浜DeNAベイスターズに熱い声援を送っていた。
本来は“商敵”である両社だが、グリーの社員らがリーグ最下位に甘んじているベイスターズに“塩を送ろう”と持ちかけた粋な計らいだった。ソーシャルゲーム業界では、技術者の流動性も高く、現場レベルでの交流も盛んだ。
だが、業界のイメージ向上策では両社の足並みはそろわない。報道各社が「消費者庁がコンプガチャに規制を検討」と報じた直後の5月7日には、1日で時価総額が両社合計で約2千億円も吹き飛んだが、「コンプガチャ・ショック」は両社の不協和音を業界内外にさらすことになった。