また、燃料費の増加が引き起こす電気料金の値上がりも問題になる。東電が予定する大口向け電気料金の17%値上げには、東京都などの自治体が「企業活動への配慮が欠けている」として反発の声を挙げた。政府関係者は「経営に余裕のない中小企業では人員削減に追い込まれるケースも出てくる」と指摘する。
競争力は著しく低下
電力不足の解消に向けて再生可能エネルギーの普及に期待する声もあるが、太陽光発電や風力発電は個人や企業の導入が前提で、大手電力が主体の原発や火力に比べて導入量の見通しがつきにくい。このため「電力不足の穴埋め策としては信頼できない」(大手電力)のが現実だ。
また再生可能エネルギーが普及したとしても、発電量は天候次第の面が強い。安定供給には蓄電設備や送電網の強化が必要になるが、これらの対策費用も電気料金上昇につながる。
日本経済は円高や自由貿易体制の構築が遅れていることなどで、海外企業との国際競争で不利に立たされている。このうえ経済活動に不可欠な電力も高価で不安定になれば、日本企業が製造拠点を海外に移す動きが加速しかねない。産業界からは「日本の経済、社会は原発なしでは成り立たない。再稼働に全力を尽くすべきだ」(鉄鋼業界首脳)との声が上がっている。(吉村英輝、小雲規生)