電力不足の深刻化が現実味を帯びている。このまま再稼働がなければ、5月上旬には全国の原発が停止。政府は火力発電の増強などで穴埋めを図るが、燃料費の増加が電気料金を引き上げ、経済活動の足を引っ張ることは確実だ。太陽光発電などの再生可能エネルギーも安定供給の面で不安があり、電力危機が日本企業の海外流出に拍車をかける懸念が高まっている。
火力代替で年3兆円
「原発なしでは経済活動が大きく落ち込む」。資源エネルギー庁幹部は電力不足への不安を隠そうとしない。
1年前の東京電力福島第1原発事故以降、定期検査に入った原発の再稼働が進まない。最後の稼働原発である北海道電力泊3号機は5月上旬には定期検査に入り、全国54基すべての原発が停止する。東日本大震災前、原発は総発電量の3割を供給していたが、その全てが失われるかたちだ。
政府はこの不足分を火力発電増強や節電で穴埋めしようとするが、全原発を火力発電で補えば、原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入にかかる費用が年間で3兆円増え、「それだけの国富が海外に流出する」(経済産業省幹部)。イランがホルムズ海峡を閉鎖すれば、深刻さはさらに増すことは明らかだ。
(次ページ)中小企業では人員削減に追い込まれるケースも