【元受付嬢CEOの視線】受付嬢だった私がCEOでいられる理由 投資家や経営陣の言葉から分析してみた

2019.11.28 07:08

 40→15→6 …突然ですが、この数字なんだかわかりますか?

 ご存じの方も多いと思いますが、会社が生存している確率です。起業してから1年後は40%、5年後は15%、10年後は6%しか生き残っていないということです。弊社は間もなく5期目ですから、どうにか「15%」の中に入れているということでしょう。

 「元受付嬢CEOの視線」というタイトルの連載をこのように続けていられるということは、私はまだ経営者であるということです。CEOでなくなったらこのタイトルは成立しませんね(笑) 社員は30名を超え、年明けには移転も控えております。正直なところ、起業当初は想像がつきませんでした。自信がなかったというわけではなく、ただただ目の前のことに必死だったのが一番の理由かもしれません。

 そして、実はこの連載も今回で第50回を迎えました。編集担当者からは「長寿連載」と言っていただき、これもまた、執筆のお声がけを頂いた時には想像もつかなったことです。読者の皆様にはこの場を借りてお礼をお伝えしたいです。いつも読んでいただき、ありがとうございます。

 さて、みなさんは不思議に思われるでしょうか? もともと受付嬢の経験しかなかった私が、まったく畑違いのIT企業の経営者として今もお仕事できているのか。私も不思議です(笑) 連載も節目ということで、今回は、私がどうして経営者でいられるかについて向き合ってみました。経営者をしていると、様々なタイミングで様々な方から評価を受けます。そこで、今まで評価された方々のお言葉をお借りしながら、お伝えしたいと思います。

「自分のことをよくわかっていますね」

 資金調達を行なっていると、投資家からフィードバックをもらうことがあります。その際に私が言われたことは、「自分の強みと弱みを良く理解し、武器にしている。そして、強い巻き込み力を持っている。これができる経営者はいいチームを構成することができ、それが会社やサービスの成長につながる」という言葉です。

 起業当初は自覚がなかったのですが、今はこの評価がすんなり入ってきます。周りを見れば、わが社の経営陣だけでなく従業員や株主、クライアントに至るまで、本当に心強いメンバーに囲まれているからです。

「運を持っていますよね」

 会社を経営していると、様々な修羅場に直面します。その修羅場をくぐり抜ける際に一番必要なのは、実は「運」だと思っています。危機は、自分たちの力だけでなく、いろんな方のお力をお借りしないと乗り越えられません。しかし、他者からするとうちの会社がそれを乗り越えようが乗り越えまいが、関係ありませんよね。そんな時に大きな味方になってくれたのは「運」です。

 私は普段から「人たらし」と言われるくらい、人を巻き込む力を持っていると言われることがあります。それが功を奏し、危機的状況を他の人にも自分ごとのように感じてもらい、手を差し伸べていただくシーンが多々ありました。しかも、絶妙なタイミングで助けを求め、助ける側も「今だからできる!」と助けてくださるケースが多かったのです。タイミングは「人たらし」では引き寄せられません。

 私が「運を持っている」とは経営陣の言葉ですが、こればっかりは自分でも感じます。狙って身につけられるものではない「運」を持っているのは経営者として大きな強みのようです。

「先輩方に恵まれていますよね」

 経営者には「起業は初めて」という方が圧倒的に多いと思います。初めてだからこそ、みなさんそれなりの「失敗」を経験してきています。本には書けないことのほうが多いようです(笑) 私には、それを惜しみなく話してくれ、課題にぶつかった時は自身の経験をもとにアドバイスをくださる先輩方がたくさんいます。損得感情抜きで教えてくださる方々です。頼れる有識者に恵まれていることは経営陣に指摘された点でもあります。

 自分の立場で、あるいは弊社としてやってみなければわからないこともたくさんありますが、「こういうところに落とし穴あるよ」という事前情報を持って進むか否かは非常に大きな違いです。

「強靭な精神力を持っている」…と思う

 ここまでは私が実際に頂いた評価についてお伝えしてきました。このほかに、「私が経営者でいられる理由」のひとつとして、自分自身が感じているのは「強靭な精神力を持っている」ということです。

 「経営していて心折れることはないですか?」という質問をよく受けます。答えは「ない」です。それは、心を折るのは他人ではなく、自分だからです。心が折れそうになるシーンに遭遇したことはあります。しかしそこで心を折ってしまうのか、持ちこたえるのかは自分次第なのです。万が一折れたとしても、自分で立ち直る力を持っているんだと思います。

 性格の中にもともと、「寝たら忘れる」「美味しいもの食べて忘れる」という楽天的な部分があるのは、経営者になって気づいた自分のいいところです。発想を転換できるような強靭な精神力がなければ、つらい時に逃げ出してしまうかもしれません。逃げ出してしまったらもう経営者ではいられません。

経営者になって小さな幸せに気づくことが増えた

 元気に経営者を続けていられる理由は、「どんなにつらいことがあってもやりたいことに向き合える毎日は幸せだ」と思うことだと思います。しかも一人ではなく、一緒に向き合ってくれる仲間がいます。信じて応援してくれる人たちがいます。そんなふうに考えると、ただただ毎日暖かいお布団で寝られることだけで充分に幸せなのです。経営者だからこそ、小さい幸せに気づくことができ、感謝することが受付嬢時代に比べ圧倒的に増えました。

 とはいえ、まだ5期目の小さな会社ですし、私自身でいうとまだまだみじんこ位の器しかないと思っています。だからこそ、肩肘張らずに先輩方に教えを請いながら、誰よりも会社と事業のことを信じ、考えていくべきだと思っています。私が経営者でいられる理由、少しでもみなさんの日々の励みやご参考になれば嬉しいです。そして、これからもいい連載を続けていけるように頑張っていきますので、引き続きお付き合い頂けるとありがたいです。

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橋本真里子(はしもと・まりこ)

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ディライテッド株式会社代表取締役CEO

1981年生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。長年の受付業務経験を生かしながら、受付の効率化を目指し、16年にディライテッドを設立。17年に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は隔週木曜日。アーカイブはこちら

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