働き方

待遇改善来たれ消防団員 大阪府が来年2月に研究会

 地域の安全を守る消防団員を確保しようと、大阪府が来年2月に団員や企業を巻き込んだ意見交換の場を立ち上げる。時代の変化により企業に就職する人の割合が増え、緊急出動を伴う消防団活動への参加は困難になりがちで、最近は担い手が不足している。関係者の対話を通じて活動への理解を深め、待遇改善につなげることで団員の減少に歯止めをかける狙いだ。

 府が立ち上げるのは「消防団充実強化研究会」。府内44消防団の団長、消防団を管轄する市町村、団員が勤める企業の人事担当者らに参加を呼びかけている。

 年1回開く予定の研究会では、会員制交流サイト(SNS)を使った消防団の広報活動を先進事例として紹介。活動への参加状況や課題の洗い出しのため、団員へのアンケートも実施する予定だ。

 特別職の地方公務員にあたる消防団員は本業を持ちながら火災発生時に職場や自宅から現場に駆けつけ、消火や救助にあたる。業務中の緊急出動も想定されることから、研究会での意見交換によって企業側に理解を促す。

 待遇改善も課題だ。総務省消防庁は8月、団員の年間報酬額の基準を3万6500円と定め、各市町村に通知した。府の調査では、全43市町村のうち26自治体の消防団で基準を下回っていたことが判明した。

 府の担当者は「研究会での議論を踏まえて団員が活動しやすい環境を整え、新たな人材を掘り起こしていきたい」と話した。

 減少背景には就業形態の変化も

 消防団員の確保は全国的な課題だ。団員減少の背景には少子化や、サラリーマンの増加に象徴される就業形態の変化などがあるとみられる。平均年齢も右肩上がりで40歳を超え、20~30代の若年層への働きかけが求められる。

 総務省消防庁によると、昭和30年に約194万4千人だった全国の消防団員は35年後の平成2年に約99万6千人と100万人を割り込み、その後も減少。令和2年は約81万8千人で、65年前の昭和30年から6割近く減った。

 団員減少の一因とされるのが就業形態の変化だ。企業や官庁などに勤める「被雇用者」の割合は、昭和40年の26・5%から同60年に54・5%まで増え、さらに35年後の令和2年には73・9%に。一定の裁量を持つ商店主や農業従事者らと比べ、サラリーマンは時間の融通がききにくく、消防団の活動に参加するハードルは高い。

 大阪府内の消防団に参加している地方公務員の男性(54)は「一昔前は地元の消防団に入るのが当然という風潮があったが、今は違う」と指摘。周囲にサラリーマンの消防団員も多いといい「公務員は比較的活動に参加しやすいが、会社勤めの場合は職場の理解がなければ、緊急時の出動は難しいかもしれない」と話す。

 少子高齢化の影響もうかがえる。全国の消防団員の平均年齢は昭和60年に34・5歳だったが、平成27年に40・2歳、令和2年は41・9歳と上がり続けている。消防庁は若年層向けの広報に力を入れ、消防団の活動の意義ややりがいをアピールする方針だ。(吉国在)

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