東京都議会の長期欠席を続けていた木下富美子都議が9日、正副議長との面会と委員会出席のため4カ月ぶりに公の場に姿を見せた。この間、都議会は2度にわたる辞職勧告決議や正副議長名での呼び出し状の送付などさまざまな手段を講じたが、有権者の負託を受けた議員の身分は手厚く保障され、“雲隠れ”を続ける木下氏に有効な手を打てずにきたのが実情だ。
「辞職するべきだと申し上げたが、本人は『辞職はしない』と。公人として責任の取り方をどう考えているのか尋ねたが、『議員として活動して返していきたい』という言葉があった」
木下氏との面会を終えた三宅茂樹議長は、徒労感や無力感をにじませながら、報道陣にこう語った。
木下氏の無免許運転事故が発覚して以降、都議会事務局には都民の抗議が殺到。批判の矛先は時に都議会の対応にも向けられた。
7月と9月の2回、都議会は全会一致で辞職勧告決議案を可決。特に2度目は「厳粛に受け止め、自ら直ちに辞職するよう改めて強く求める」と明記した。「2回も出されるのは前代未聞で極めて異例」(議会関係者)の事態だったが、法的な拘束力はなく、あくまで「勧告」にとどまる。
正副議長名での呼び出し状も送付したが、これもなしのつぶて。今回、3回目の呼び出しにようやく応じた形だ。
この間、木下氏への議員報酬は停止する法的な根拠がなく、支払いが続いた。都議会事務局によれば、これまでに月額81万7600円の議員報酬が4カ月分、計327万円を支給。加えて、12月には約200万円のボーナスも支払われる見込みだ。
都議会では長期欠席した場合に議員報酬を削減する条例案を9月定例会で審議したが、「本当に病気で長期療養を余儀なくされる場合もある」といった意見もあり、審議は12月定例会に持ち越された。条例案を提出した会派内からも、「議員の身分は民主主義の根幹に関わる」として慎重な議論を求める声が上がる。
仮に12月に条例が成立しても今年度の適用は難しく、木下氏には満額支給される可能性が高い。木下氏は受け取った報酬について、「選挙管理委員会の指導を受けNPO法人に寄付した」と説明したが、選管によれば、寄付したかの確認は取れていないという。
地方自治法で議員への懲罰として規定された「除名」を求める声も上がるが、対象は本会議や委員会で問題行為があった場合とされ、議会の外での行為にも適用するかは慎重な判断が求められる。
国会でも、事件などで当選無効となった国会議員の歳費返還を義務づける歳費法の改正が議論されているが、結論は得られていない。