「在宅ワークの日はオンとオフの切り替えができない」「平日と週末の区別がつけにくく、休んでいるようで休めていない」という人が増えています。産業医で精神科医の井上智介さんが、上手に休むためのコツを伝授します--。
日中に眠くなるのは休めていない証拠
「朝起きてスッキリしない」「寝ているのに疲れがとれない」……。疲れが溜まっていると感じるときは、うまく休めていないサインです。
仕事熱心な人ほど責任感が強く、休むのが苦手。しかし、休みもとらず働き続けているといつかバーンアウトし、心身の健康を損なってしまいます。健康的な働き方をするためには、上手に休むことが欠かせません。
平日と週末、それぞれに休み方のコツがあります。
まず、平日に大切なのは、しっかりと睡眠をとることです。私たちは常に頭をフル回転させながら、大量の情報を処理して生きています。それなのに、頭を休ませる時間は、寝ているとき以外ほとんどありません。ですから、まず睡眠をしっかりとって、頭と体の両方を休ませましょう。
よく「何時間寝たらいいですか」と聞かれますが、「○時間がいい」という基準はありません。ざっくり言うと、日中眠くならない程度ならOKです。
昼食後に眠くなるのは「アフタヌーン・ディップ」と言われる、よくある生理現象なので、気にする必要はありません。しかし、睡眠不足の人の眠気はレベルが違います。「ちょっとウトウトとして15分ぐらいで起きる」のが標準レベルだとしたら、睡眠不足の人はウトウトどころではなく、本気で眠り込んでしまう。それだけでなく、朝からずっと眠気がとれないという状態です。これは明らかに、睡眠不足で疲れが溜まっています。
昼食後の仮眠は習慣に
実は昼食後の仮眠は、午後からシャキッと働くためにも非常に効果的です。習慣化するのも良いと思います。
ただ、在宅ワークだと、つい布団やソファで横になって寝たくなるかもしれませんが、これはNG。というのは、体を横にして寝ると、血圧が下がるからです。いったん血圧が下がると、次に動くときにまた血圧を上げなければならず、午後からのスタートが切りにくくなります。
横になりたい気持ちもわかりますが、机に突っ伏して寝るほうが適切です。仮眠の前にコーヒーを飲むと、その15~20分後にカフェインの効果が出て覚醒しますので、仮眠からスムーズに目を覚ますことができてお勧めです。
夜までダラダラ働くのを防ぐためには、オンとオフの切り替えを意識しましょう。在宅ワークでも、仕事をするときは髪の毛をととのえたり、仕事服を身につけたりと、身支度をすることです。わざわざネクタイをつけて、新品の靴をはいてパソコンに向かう人もいます。そして仕事が終わったら、靴を脱いで、部屋着に着替えることで、オフに切り替える。こうして「仕事モード」と「休みモード」のスイッチを切り替えるための「儀式」をつくるとよいでしょう。
週末の休み方のポイント4つ
せっかくの週末、休日にも、「うまく休めない」という人は多いようです。僕の患者さんの中にも、「平日の疲れをいやすために週末はダラダラ過ごしているけれど、そうやって夜を迎えると、時間をムダにしてしまった気がして罪悪感を持つ」という人がいます。
週末、上手に休むためには、「生活リズムをくずさない」ことが重要です。週末に生活リズムがガタッとくずれると、平日を使って戻さなくてはならず、当然、週明けの仕事のパフォーマンスが下がってしまいます。
では、生活リズムをくずさず上手に休むにはどうしたらよいのでしょうか。ポイントは4つあります。
(1)朝寝坊は平日のプラス2時間以内
休日は、目覚まし時計をかけずにダラダラと昼まで寝ていたいところですが、朝寝坊は平日のプラス2時間以内におさえましょう。例えば平日6時に起きている人なら、休日は8時までに起きるようにします。
だいたい2時間以内なら、自然に体が調整してくれますが、2時間以上寝坊すると、夜、寝つけなくなり、軽い時差ボケのような状態になってしまいます。週末だからといって、本来起きている時間に寝ていると、いざ月曜日に体を動かそうとしても、なかなか動けなくなるのです。もちろん、2時間以内におさめるのであれば、いつもより多く睡眠時間をとるのは問題ありません。