新型コロナウイルスの感染拡大と人出を抑えるため、菅義偉首相が18日、経団連にテレワーク強化への協力を求めた。もっとも、テレワークの実施率は、1回目の緊急事態宣言が発令中だった昨年5月の3割超から、今年7月には約2割まで下がったとの調査もある。業種や規模によっては実施しづらい上、「テレワーク疲れ」もあり、これ以上のテレワークの拡大や継続は困難との見方が出ている。
テレワークを進めてきたのは、人繰りに余裕があったり、テレワークのためのIT環境を整備する資金やスキルがあったりする大企業が中心だ。
パナソニックは緊急事態宣言対象地域のオフィスを原則テレワークに。大和ハウス工業は大阪本社での出勤を1部署3人まで、東京本社での出勤率を全体の1割程度までに抑えている。
ただ、政府目標である「出勤者数の7割削減」や、経団連の十倉雅和会長が18日に言及した7割を超える削減は、部署によっては大企業でも難しい。
関西みらい銀行は本部社員を対象にサテライトオフィスなどを使ったテレワークを週2日以上行うよう指示しているが、政府目標の達成は「顧客情報を扱う業務で本部にしかない専用端末もあり簡単ではない」とする。
宣言対象地域のオフィス出勤率を2割程度までに抑えるクボタも工場従業員のテレワークは難しく、ワクチンの職場接種を優先する対象としている。
中小企業ではテレワークはさらに困難だ。東大阪市のゴム製造業者は「(オフィスワークとして)受発注の作業を行う部門があるが、現場の状況に合わせて働くので出社しなければ仕事にならない。人数はもともと最小限でテレワークする余裕など一切ない」と訴えた。
日本生産性本部によると、国内でのテレワークの実施率は昨年5月に31・5%だったが、その後は20%前後で推移し、今年7月は20・4%にとどまった。
在宅勤務で仕事の効率が「上がった」「やや上がった」を合わせた割合は4月の59・1%から7月の50・2%へ初めて減少。満足度を示す数値も悪化しており、日本生産性本部は「一種の『テレワーク疲れ』が生じている懸念がある」「テレワークの後退へと潮目が変わりつつある」としている。