五輪が開幕した東京に新型コロナウイルスの“第5波”が広がり、国内で過去最大の感染拡大となりました。本来であれば自国開催の五輪・パラリンピックに沸く夏休み期間のはずですが、仕事の面ではなかなかモヤが晴れません。先行きが不透明な中、お盆が明ければあっという間に上半期末。夏休み気分に浸っている場合ではなく、これまで以上に「成果を出せる」上司か否かが厳しく問われています。
今回は、5000社を超える企業を指導し、多くの倒産寸前の企業を立て直したとされる、日本における経営コンサルタントの第一人者、一倉定氏に「目標達成の指導法」を学んでみたいと思います。
「社長の教祖」と呼ばれた一倉定氏
「社長の教祖」「日本のドラッカー」などと呼ばれた一倉氏には、戦後の高度成長期に多くの経営者が指導を受けました。その後、1999年に逝去されてから現在に到るまで、幅広い世代・業種の経営者に支持され続けています。
なぜ多くの経営者を惹きつけるのか。それは、一倉氏の企業・経営に対する厳しい目と、何としても良い会社として存続させるのだという暖かいハートにあるのだと思います。
一倉氏は経営者について次のように語っています。
「企業というものは、放っておけば赤字になり、倒産するようにできているのである。それを黒字に持ってゆき、存続させなければならないのが経営者なのである」
成果を上げるために指導すべき7項目
一倉氏は、経営者や上司の皆さんが成果を上げるために、部下・後輩に指導すべき項目として7つを挙げています。1つずつ見ていきましょう。
指導項目(1) 成果は顧客によって得られる
不透明で閉塞感漂う状況になると、自然と社員全員の目が「内」に向くようになります。「上司はどう思っているのだろう」「部下たちは自分に不満を持っているのではないだろうか」。こうした空気に、社長もこれまで以上に「社員の和」を説くようになります。
しかし、これを一倉氏は一刀両断します。
「企業の本当の支配者は、社長でもなければ株主でもない。それは顧客なのである。企業の製品もサービスも顧客あっての話なのだ。この当たり前の、あまりに当たり前のことが、とかく忘れられてしまうのである」
今のような環境下でこそ、社内で如何に「顧客第一主義」を指導するか、その結果どうなるかを注視し、会社ぐるみで顧客の要求に応じる姿勢が必要であると力説しています。
指導項目(2) 結果に焦点を合わせる
上司の皆さんも経験があるのではないでしょうか。見通しが悪いとき、厳しいときほど、どうしても、あれやこれやと細かいところまで降りていって指示を出したくなります。
しかし、手段を縛り(標準化し)、その上で目標がぶれるというのが最悪の状態だと一倉氏は指摘します。
「『目標は一つでも、手数は無数にある』という指導理念に徹する必要がある。やり方はどうでもよいのだ。要は結果を手に入れることなのである」