「ビジネス視点」で読み解く農業

農業振興の最前線(4)強い農業を守る 地域振興の新しい形に挑戦する埼玉県深谷市の取り組み (1/3ページ)

池本博則
池本博則

 今回は、前回に引き続き、埼玉県深谷市の取り組みについてお話したいと思います。前回ご紹介した通り、令和元年6月に農業振興の取り組みとしてアグリテック集積宣言を実施し、深谷市農業の未来をそして日本の農業を変革していくための取り組みをスタートしました。3年目を迎える今、その宣言から起き始めたイノベーションについて今回はお話したいと思います。

 アグリテック集積を実現するための民間企業パートナーとして、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」をはじめ、「自立した持続可能な地域」を実現するために全国の自治体を支援している株式会社トラストバンクなどが推進パートナーとして、深谷市とアグリテック集積に向けた取り組みをスタートしていきました。

 このプロジェクトは3年目を迎えている今も変わらないことがあります。それは主催である深谷市産業ブランド推進室を中心とした深谷市のこの事業に取り組みための「情熱」と「圧倒的な思考」、そして「施策の継続」です。地域創生や農業振興を支える事業をしている我々は、地域の振興を担う様々な方と議論を交わしてきましたが、深谷市のディープバレーに関する取り組みの協議時間は他を圧倒します。

 そして細部にわたるまで議論し、迷った時には目指すべきVISIONに立ち返り、「深谷市の農業のためになるか?」「農家さんを笑顔に出来るか?」「その取り組みは日本の農業を救うための取り組みになり得るのか?」そうした議論をあたりまえのように長い時間、変わることなく継続されています。(※その意欲はいつも思うのですが、深谷市って民間企業じゃないのか?(笑)と錯覚してしまうほどの勢いです)

 多くの自治体における地域振興や農業振興には時限性があり、残念ながら事業の切れ目が施策の切れ目となり、完全に地域社会に浸透する前にお役御免となるものも多く存在します。※年度事業として取り組むことが自治体の基本のため致し方ない所はあります。

 深谷市は、そうした常識を覆す意欲、そして本気で成し遂げる意志を持って取り組みをしている。その事をまずお話してから本題に入っていきたいと思います。

■日本の農業の未来を変えるイノベーターを集める

 「いかにして、日本の農業の未来を変える技術を持つ事業者と出会い、集めるか?」

 この施策を実現させるための柱として、「DEEP VALLEY Agritech Award」は始まりました。

 DEEP VALLEY Agritech Awardとは、儲かる農業都市の実現のため、深谷市の農家が抱える農業課題を解決する独自の技術(アグリテック)、アイデア、ビジネスモデルをビジネスコンテスト形式で集め、意欲溢れる企業を表彰するというものです。応募資格は個人、法人どちらでも可で、アグリテックを志すすべての方を対象にすることで多くの方々からの応募がありました。また海外在住の日本人など多様な応募者からのエントリーがあるのも特徴です。

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