テレワークの推進など働き方改革が進む一方、就業時間外の対応を拒否する、いわゆる「つながらない権利」の侵害が拡大している恐れがあることが、NTTデータ経営研究所(東京)がまとめた調査で分かった。在宅勤務では「ハンコ文化」による弊害より、「社内の状況が分からない不安」が大きなハードルになっていたことも明らかになった。
NTTデータは、働き方改革の取り組み状況と効果について「新型コロナウイルス感染症と働き方改革に関する調査を実施。2020年3月から1年間のテレワーク(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務など)の推移を調査、分析した。2019年から調査している「就業時間外の連絡(つながらない権利)」とも比較した。
調査結果によると、働き方改革関連法の施行や新型コロナウイルス感染症対策に迫られた2020年以降、働き方改革に「取り組んでいる」と回答した企業は前回調査から6.7ポイント増加し、56.0%となった。特に、従業員数1000人以上の規模の企業では、77.1%の企業が働き方改革に取り組んでいた。
最大の弊害は「社内状況が分からない不安」
在宅勤務と出社の組み合わせが「月の50%以上」と回答した人が最も多い時期は、初めて緊急事態宣言が発令された2020年3月~5月で36.7%、2度目の緊急事態宣言発令後の今年2月以降は31.1%にとどまった。
在宅勤務のボトルネックとして挙がったのは「社内の状況がよく分からない」が38.7%と最も多く、「紙の書類を前提とした押印、決裁、保管などの手続き」(24.6%)を14.1ポイントも上回った。ハンコ文化や紙文化の弊害より、相手の状況が分からないことが障害になっている実態が浮き彫りに。
このほか、自宅の仕事環境に起因する「通信回線が不安定」(15.4%)、「作業スペースが十分確保できない」(15.2%)、「家族がいて仕事がはかどらない」(9.3%)と続いた。
在宅勤務に取り組んでいる企業の社員、役員のうち、82.5%が通勤時間や移動時間を削減できること」などを理由に「在宅勤務を実施したい」と回答。一方で「できる仕事に限界があること」や「仕事と私生活の区別がつかないこと」を理由に、23.2%の人が「在宅勤務を継続は可能であっても実施したくない、継続は困難と感じる」と考えていること分かった。
同僚間で「つながらない権利」の侵害が拡大
就業時間外に上司から緊急性のない業務上の電話やメール(LINEなどを含む)があり、通話・返信などを週1回以上対応している人は、前回調査と比べて7.6ポイント増の22.5%となった。一方、同僚では11.5ポイント増の25.0%となった。「できれば対応したくないが、対応するのはやむを得ない」と考えている人は46.7%と最多。同僚という気軽さから就業時間外に連絡してしまうが、対応する側は「できれば対応したくない」と考えているようだ。