SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第101回はフランスの航空会社で日本人CAとして乗務15年目の鶴﨑八千代がお送りいたします。
コロナ禍のなかでフランスの航空会社は
CAママとしての乗務生活から生活が一変したのは、私が住むフランスでロックダウンが開始した2020年3月中旬です。カフェ文化のあるフランスですが、カフェに行けず、その他レストラン、お店、美術館、すべてがストップし、街はゴーストタウンとなりました。この頃から、フライトがキャンセルになりコロナ不況に突入しました。
フランスでは、「健康被害を受ける可能性がある場合は働かない」という選択ができます。勤務拒否をするスタッフが多くてルーブル美術館が開館できなかったとニュースにもなっていました。「乗務するか?」「乗務しないか?」選択肢が与えられ、乗務を希望する社員だけが仕事をしている状況です。
乗務歴22年…最初で最後の経験
私は、持病を持った義理家族がいるので、感染リスクを避けるため、しばらくは自宅で過ごしていました。3カ月ぶりに乗務したニューヨーク便のお客様の数に愕然としました。
ファーストクラスはゼロ、ビジネスクラスも2人のみ、お客様の人数は全クラス合わせて25人。アメリカでの経験も含めて乗務歴22年になりますが、定年まで乗務したとしても最初で最後の経験かもしれません。ニューヨークの街並みも驚くほど閑散としていました。
CAママの日常に大きな変化
通常だと「日本・フランスを3往復」が基本で、月3回のフライト、トータルで月12日間の勤務体制です。しかし現在は月1回のフライト、3日~5日の勤務となっています。普段は日本・フランス路線を優先して乗務していますが、現在は、南米・中東など世界中を飛んでいます。乗務は平均して3分の1に激減、全くフライトがない月もありました。
突如与えられた、産休・育休以外では人生初の1カ月の夏休み休暇。フランスでキャンプ、山登りのアウトドア、街の散策と満喫しました。私のように、逆に家族との時間を楽しんでいるCAママも多い印象です。
月の半分はママが留守にするCA生活、子供たちにとっては最高の日々です。現地の学校に通学する子供たちは、普段は日本語を全く話してくれなかったのが、このロックダウンを機に日本語を話すようになり、ギフトをもらった気分です。
皆さん同様、コロナ禍で将来への不安を感じてはいますが、“ポジティブ眼鏡”をかけてみると感じ方も変わるかもしれません。家族の時間、そして健康状態、お肌の調子も実は20代の時より良好です。沢山の自由な時間、ちょっと一休み、セミリタイアの時期と割り切って過ごしています。
フライト激減、お給料はどうなっているの?
フライトが激減し、休んでばかりいたらお給料は大丈夫なの? と思われた方もいるでしょう。フランスでは「Chomage Partial(ショマージュパーシャル)」と言って半分失業状態になっています。当初は、お給料の84%だった給付額も、コロナとの長期戦が見込まれ72%まで減額されましたが、会社からのお給料、国からの給付金で調整されています。
通常時と比べれば30%減額にはなりますが、それでも、20代でリストラを2回経験している私にとっては、リストラしない会社の方針、国のサポートに感謝しかありません。