EC急伸の中、体験が弱点を埋める 将来はOEMで既存店の“b8ta化”も
b8taのサービスは、コロナ禍やアフターコロナの時代で、さらに利用価値が高まる可能性を秘めている。背景にあるのが、コロナ禍の巣ごもり需要で、ECの利用者や機会が加速度的に増え、今後も不可逆的な拡大が予想されることだ。ECは便利であるが、実際に製品に触ったり、体験したりすることができないのが弱点。一方で、買い場のECへのシフトが鮮明になる中、実店舗にとっては「体験」こそが価値だ。ECがb8taを利用してウィークポイントを埋める動きが広がることは、容易に想像がつく。
実際、そうした流れが顕著に現れているのがクラウドファンディングのプロジェクトだ。まだ世に出ていない先鋭的な製品にウェブサイト上で支援金を募り、支援者には事後に完成品を届けるプロジェクトが多いが、開発ストーリーや思いを熱くつづってアピールすることはできるものの、実機を手に取る体験を提供できないのが難点。その課題を克服するため、プロジェクト上でb8taに出品していることを周知し、来店して試すことで理解が深まり、より多くの支援金を集める成功例が出てきているのだ。
典型的な好例が、毛皮に覆われ、まるで生きているように動いたり、鳴き声を発したりするAIペット型ロボット「MOFLIN(もふりん)」のプロジェクトだ。開始と同時にb8taに出品すると、実際に触って愛くるしさを体験したいと多くの人が訪れ、メディア露出も拡大し、Twitterでトレンド入りするほど話題が拡散。結果、6000万円以上の調達を成し遂げ、ここ数年で最も成功したロボット関連のプロジェクトとなった。
外資メーカーによる「日本初上陸」の製品の販促に効力を発揮するケースもある。一例が、手首に付けるだけで摂取カロリーが自動的に計測できるスマートバンド「HEALBE GoBe3」だ。発売元のHEALBE JAPANがb8taに出品し、数多くの人が体験することによって、同社のウェブサイトへの訪問数が最大約30倍に増加し、初回入荷分が2週間で完売。その人気ぶりを家電量販店などにアピールすることで、目標の2.5倍の販売店舗数を確保し、スタートダッシュを成功させた。
その他、スタートアップだけでなく、花王やロート製薬など既存の国内大手メーカーが出店し、化粧品を体験する場を提供する動きも進んでいる。「大手は百貨店などの小売店からECまで、既にあらゆる販売チャネルを持っており、次の一手の開拓が課題。そうした中、体験に特化した接点であるb8taの可能性が認められ、出品につながっている」(北川氏)。
b8ta側も、既存の2拠点に続き、国内でビジネスを拡大する新たな動きを始めた。福岡市内において、博多駅直結の「博多阪急」、福岡PayPayドーム近くの「MARK IS 福岡ももち」、天神エリアの「イムズ」の3つの商業施設に、21年4月から期間限定でポップアップストアを開設。新たな試みとして、ボールドライト社のスタンプラリーシステム「プラチナラリー」を導入し、各製品に対する来店者からの声をスタンプラリーと連動したアンケートで集める。「福岡は在京の大手やスタートアップにとって、距離的に遠く、進出に興味を持ってもなかなか踏み切れない地域。そうした企業にとって、試しに出品することで、不特定多数の来店者に体験を提供でき、生の声を集められるまたとない場になる。今後は、他の大都市でもこうした期間限定のポップアップストアの展開を模索したい」(北川氏)。
また、将来的には、b8taのノウハウやシステムをOEM提供し、既存の小売店を体験特化型に再生する事業も視野に入れている。いわば、世の中の様々な店舗を“b8ta化”する野心的な構想だ。ECが急伸し、実店舗の存在意義が問われる中、ビジネスモデルとしては十分需要が見込めるといえるだろう。
写真・資料提供:b8ta Japan
(大来 俊/5時から作家塾(R))