3人とも間違いなくビジネストラブルに見舞われている。そして3人とも妻に嘘をつき、その場を取り繕おうとしている。となれば、妻からすれば楽観的にならざるを得ない。すでに本当のことを言っていたのであれば、余計な言い争いはしなくて済んだだろう。それなのに騙していたものだから、いずれ嘘が露呈した場合には「私だってパートの時間を増やしたのに!」「私の実家からお金を借りたのに!」「あの時、あんなもの買わなかったのに!」などと言われる可能性が出てきてしまうのだ。
家庭でも大事な「報連相」
「報連相」という新入社員が習うビジネスの基本があるが、それは家庭に対しても同じである。私はかねてより「人が仕事をする理由は『怒られたくないから』である」という説を唱えてきた。
それを悟ったのは会社員時代、私のクライアント企業だった某外資系企業の日本人担当者が深夜2時に突然書類を作って欲しい、と無茶ぶりをしてきた。私は別の仕事もあったので無理だと断ったのだが、彼女は電話口で悲鳴をあげながらこう言った。
「頼みます! もしもこの書類を出さなかったら○○(アメリカ人上司)が怒るんです!」
この瞬間、私は「人が仕事をする理由は『怒られたくないから』である」という真理に気付いたのだ。
今回の3人は妻から怒られたくないがために、怒られる日が来るのを先延ばしにしている。こんな精神状態ではいい仕事ができるわけがない。本来家庭というものは穏やかな時を過ごす場所であるはずなのに、あたかも職場が2つあるような状態になってしまうのは鬱病など、精神の病を発症させてしまう恐れがある。確かに給料・ボーナスの減額や解雇は家族から怒られるかもしれないが、正直に真実は言った方がいい。これでビジネストラブルが回避できるのだ。
【ビジネストラブル撃退道】は中川淳一郎さんが、職場の人間関係や取引先、出張時などあらゆるビジネスシーンで想定される様々なトラブルの正しい解決法を、ときにユーモアを交えながら伝授するコラムです。更新は原則第4水曜日。アーカイブはこちら