民間の調査会社が発表した「都道府県魅力度ランキング調査」について、評価の低かった自治体から信頼性や妥当性を疑問視する声が上がっている。定義があいまいな「魅力度」の結果がブランド力を示す指標として“独り歩き”し、誤解を招いているというのが主な理由だ。ランキングを発表した「ブランド総合研究所」(東京)は社員10人ほどの会社だが、約450万人の調査モニターを確保し、調査には100人以上の関係者が携わっているという。最下位となった栃木県の知事から“抗議”を受けた同社の田中章雄社長は「調査の問題を四の五の言う前に(県が)自分たちの問題を把握すべきです」と強調する。
「お金を払わないと他の調査項目が見られない」
「このランキングは、魅力度を測るツールとしては信頼性に欠けると言わざるを得ません」。群馬県の山本一太知事は10月22日の定例記者会見で、不快感をあらわにした。日本一の自然湧出量を誇る草津温泉や世界文化遺産の富岡製糸場など観光資源に恵まれた群馬県だが、魅力度ランキングでは最下位となった2012年以降も低迷。今年は昨年の45位から過去最高の40位に上昇したものの、山本知事は「ランキングは県の魅力を反映していない」として、信頼性に疑問を呈したのだ。
県はランキングの結果が与える負の影響などを無視できないと判断。県庁内に「魅力度ランキング検証チーム」を設置した。専門家の意見を交えながら統計学的な妥当性などについて検証を進めるため、「ブランド総合研究所が出している7万4000円の報告書を公費で購入した」(県戦略企画課)という。
この報告書を公費を投じて購入したのは群馬県だけではない。栃木県総合政策課とちぎブランド戦略室の担当者は「魅力度ランキングというのは、実は『地域ブランド調査』の84ある調査項目の1つにすぎないのですが、移住定住の意欲度や観光意欲度など他の項目は(報告書を購入するために)お金を払わないと見られないのです」と明かす。
栃木県は今年、昨年の43位から最下位の47位に転落した。日光東照宮を含む世界遺産「日光の社寺」をはじめ、鬼怒川温泉や那須高原、蔵の街・栃木市など有名な観光地を多く抱え、宇都宮餃子や佐野ラーメンなど味覚も豊富だ。にもかかわらず、全国で最下位だったのだから県トップの知事も穏やかではない。福田富一知事は10月21日、東京・虎ノ門にあるブランド総合研究所に直接乗り込んで“抗議”し、調査方法の見直しを求めた。
県の担当者は「魅力度という漠然としたランキングのみ公表されているので、それが総合的な魅力評価と勘違いする人も多い。お金を払わないと他の調査項目が見られないというのは、国民の誤解を招きます。客観性と公平性はどうなのでしょうか」と疑問視する。
一方、茨城県は静観の構えを示す。外国人観光客にも人気の国営ひたち海浜公園といった観光資源だけでなく、研究学園都市のつくばなど魅力は少なくないように思われるが、7年連続で最下位に沈んでいた。今年は42位に浮上したものの、ランキングの結果に一喜一憂することなく、プロモーション活動を続けていくという。
県営業戦略部プロモーションチームの青木隆行グループリーダーは「魅力の定義もない中での調査ですので、どういう調査なのかと戸惑っていました。普通に考えて北関東3県が魅力的でないわけがなく、『何でなんだろうな』としか言いようがありません。ただ、魅力度のランキング上げるために何かしたかといえば、何もやっていません」と言い切る。
ネット上では「結果が信憑性あるものなのかあやしい」「魅力度ランキング自体、おかしい!」といった声も散見されるが、信頼性などに疑問を呈する一部の声を、ブランド総合研究所はどう受け止めているのか。