元受付嬢CEOの視線

受付嬢時代に培った「テロ対応」と「昼寝」が会社経営に役立つなんて… (1/2ページ)

橋本真里子
橋本真里子

 私が受付嬢を卒業してから4年半以上が経ちました。様々なことが起こりつつも、こうして今でも経営者として続けられていることは本当にありがたいなと感じる日々です。正直、起業した当時に今を想像できていたかというと、全く想像できませんでした。それどころか、1年先にどうなっているかを考える余裕すらなかったです。四苦八苦しながらも、なんとか会社と事業を継続できている事を労ってもらうことがあります。

 そして労うと共に、いろんな質問をいただきます。多くは「受付嬢しかやった事ないのに、どうしてここまで経営者やれているの?」という質問に紐づきます。私自身も不思議に思う事ですが、きっと受付嬢時代に培ったスキルを総動員しているというのが一つの理由だと思います。そこで今回は、私が「受付嬢時代に密かに培ったスキル」についてお話しさせていただきます。

会社経営と同じだった 受付嬢が身を置いている環境

 実際に「経営者」と「受付嬢」を比較してみて気づいたことがありました。それは、「身を置いている環境が似ている」ということです。

 具体的にあげると2つのポイントがあります。1つ目は、「常に会社の顔として、会社の最前線に置かれている」ということです。そして2つ目は、「自分のペースでは仕事ができないこと」です。

 「経営者の言動=企業イメージ」と言われています。何をするにも、経営者の行いや発言は会社のイメージに直結します。受付嬢も同じです。会社の入り口にいて、会社のイメージを象徴する役割を持つ受付嬢の立ち振る舞いや接遇は、企業イメージを左右します。全く立場や日々の業務は違いますが、立場を取り巻くフレームは全く同じということです。受付嬢時代に「常に誰かに見られている意識を持って発言・行動すること」は、経営者になった今でも無意識に根付いており、自身や会社の信用構築には寄与していると思います。

 そして、「会社経営は何が起こるかわからない。何か起きたときは全てが経営者の責任であり、対応する義務がある」といった内容を耳にすることがあると思います。常に、いつ何が起こるかわからない=アンコントローラブルなことと隣り合わせなのが経営者です。一方、受付嬢はどうかというと、「来客はいつ、どれくらい、何人で、どんな目的で来社するかわからない」という対応を日々の業務とするわけです。もちろんお約束がある方もいらっしゃいますが、飛び込み営業もあります。クレームでの来社もあります。そんな「自分たちではタイミングや、対応の可否を選択できない業務」を担っているのが受付嬢なのです。

 会社経営と共通するのは「自分のペースや業務範囲をコントロールすることが難しい」ということです。ある種「ハプニング的」な業務に受付嬢時代から触れてきたことは、経営者になっても生かされていると思います。

「テロ」に鍛えられ経営者としての武器に

 受付嬢にとって、「空気を読む」「臨機応変に対応する」は大事なスキルです。

 例えば「今はお茶を出さない方がいいタイミング」だったり、逆に「応対する社員が、受付嬢に“お部屋出し”(※)の声がけをしてほしいタイミング」などを空気を読んで対応するなどが挙げられます。(※会議室終了時間になったら、受付嬢がお部屋を“追い出す”行為です。)

 一気に押し寄せてくるコアタイムの来客を「テロ」と表現したことはないでしょうか? 受付嬢は、それくらい混沌とした状況で、会社のイメージを崩すことなく対応しなくてはいけません。瞬間的に優先順位をつけ、大変さを一切顔に出すことなく捌き切る「臨機応変さ」が求められます。

 やってみて気づいたことですが、経営者にもこの2つのスキルがとても重要なのです。経営者も空気を読むシーンは多々あります。営業のシーンでもそうですし、イベントなどでの登壇も場の空気を読みながら進めます。そして、臨機応変さも必要です。資金調達や取材の際など、予想外の質問をされることも多々あります。そういった時に、顔色変えずに対応できることは、経営者として求められる力量だと思います。なかなかこういったスキルを身につけられる職業はないと思うので、今でも自分を支える武器を授かったと思います。

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