単なる「巣ごもり需要」では説明つかない好業績
コロナによる大打撃を受けている日本経済ですが、その中でも好調な業績を記録していたのが、家具販売のニトリ、そしてユニクロです。ニトリは6月に発表した四半期決算によると3月から5月で売上高は4%増、営業利益は20%以上の増となっています。ユニクロも、自粛中でも客単価を10%伸ばしています。
同業他社が同じような実績を残せていない状況で、この2社の好調は、アマゾンのように単なる巣篭もり消費の恩恵を受けた結果とは言えないのではないでしょうか。
慣例を打破したニトリとユニクロ
ニトリとユニクロは、製造小売と呼ばれる業態をとっています。製造小売とは、自社店舗で販売する商材を自社で製造するというものです。
ふつう、洋服屋はデザイナーがデザインをする。工場が製造する。それを問屋が買い付ける。そこから商品を仕入れて小売店が売るという流れです。ユナイテッドアローズなどには、様々なブランドの洋服が並んでいますが、そのような形式です。家具屋さんも同様です。日本国内はもちろん、世界中でデザイン、製造されたものを「買い付け」して店舗に並べていたのです。
ユニクロとニトリはこの慣例を打破して、自らデザイン、製造、販売までを抱えることに乗り出した企業です。そうすることでコストが安くなりますので商品の価格を抑えることができるようになります。それが強みの一つとなります。
そして、もう一つの強みが今回のコロナの状況で発揮されたもので、「企画から店頭販売までのスピードを早めることができる」ということです。
ユニクロは「おうち」をキーワードにして、素早く商品品揃えを準備して、積極的にマーケテイングPRしていました。また、ニトリは、テレワークで使いやすい椅子や机を充実させています。また、外食が減ったことにより需要が高まったと言えるキッチン用品、そして在宅時間を快適にする収納用品も早急に並べています。
この商売の、「必要とされるものをすぐに用意する」ことが、製造~仕入れまでが遠い洋服と家具という業態でも実現できていたのが好業績の一番の要因ではないでしょうか。「買い付けは1年前」などというのが普通になっている洋服屋では到底太刀打ちできないのです。
では、なぜ他の企業はこうした製造販売、ビジネスモデル用語では「垂直統合」といいますが、それを実現しないのでしょうか。
なぜどの企業も「垂直」を採用しないのか
実は垂直統合には、大きく2つの難しさがあります。
(1)強みのない分野に多額の資金で進出していかなくてはいけない
人気が出そうな家具をデザインすることと、それを工場で製造すること。さらには、物流を整えて遅延なく安全に配送することは全く違うノウハウが必要になります。製造だけを専門にする工場が存在し、物流専門の企業が存在することからもわかることです。
(2) 優良な専門企業が出現したときに協業しにくい
自社よりも優良な工場や物流会社が現れたときに、そのノウハウを活用するのが難しくなります。それぞれ自社の一部門ですので、それらを簡単にはカットすることができないのです。
(1)と(2)は表裏一体です。工場における品質管理、物流のシステム構築を徹底的に高めていかなくてはいけない。そして、それが足かせにならないように進化し続けなければいけない。これは小売業の「売る」や企画業の「考える」とは全く別次元の仕事です。それらを同時に抱え込んでいくには長い時間がかかることです。
ユニクロは1991年から、ニトリは1970年代から取り組んでいたのですから一朝一夕で追いつくことは難しいのではないのでしょうか。 ちなみに、自社でネット受注と物流を構築するのが難しい洋服屋に向けてそれらを「代行する」企業として大きくなったのがZOZOでした。