お財布内シェア争いの終焉
もともと、ICカード型のプリペイドカードは、財布に何を入れてもらうかの競争でクレジットカードやポイントカードとお財布内シェアを争ってきた。PayPayなどのコード決済の普及で、今度はスマホに入らない決済手段は、できるだけ減らしたいという気持ちが消費者に出始めているのかもしれない。
また、電子マネーは、収益モデル上、クレジットカードほどポイントを還元できない(ローン収入が電子マネーにはない)。またコード決済の先行投資的還元競争にも対抗できなかった(コード決済は、金融ビジネスやマーケティングビジネスで将来の収益回収を図ることで、この先行投資を回収する戦略をとっている)。
この還元が少ないという問題も、上記の「データ収集戦略」の移行とあいまって、流通系の電子マネーが衰退を始めた理由だろう。
デジタル化は、1周限りの競争ではない。流通系企業にとって、自社の電子マネーを普及させることはデータ収集競争において重要な戦略となってきた。ファミリーマートは自社電子マネーを持たないハンデがあったからこそ、自社コード決済への参入に踏み切ったと考えられる。流通系電子マネーの衰退の始まりは、大手流通企業のデータ収集競争が終わったことを示すわけではなく、流通系企業の決済をめぐるデジタル化競争が2週目に入ったことを示しているのだと考えられる。
【アフターコロナのデジタル戦略】では、早稲田大学ビジネススクールの根来龍之教授が時事問題を通じて、コロナ禍後のデジタル戦略を展望します。アーカイブはこちら