人事

最低賃金7都道府県が凍結 都市圏で据え置き優勢、地方は増額模索

 2020年度の地域別最低賃金の改定は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で雇用情勢が悪化する中、前年度までの大幅引き上げから一転、7都道府県が据え置き、40県が1~3円の微増となった。最低賃金の水準の高い都市圏は雇用維持のため引き上げ凍結が優勢となり、水準の低い地方圏は人材流出を防ぐため増額を模索する動きが目立った。

 「コロナ禍で経営が苦しいのは分かるが、最低賃金近くで働く立場の弱い労働者に希望を与えるべきだ」。6日午前、鳥取地方最低賃金審議会の部会で労働側代表、連合鳥取の田中穂事務局長はこう強調した。鳥取県の最低賃金は現在時給790円で、労働側は800円への引き上げを掲げ、経営側は「凍結」を強く主張。結局、引き上げ額2円で折り合い、午後には答申をまとめた。

 経営側代表の鳥取県商工会連合会の平木修副会長は「人材流出が深刻で若者に戻ってきてもらうためにも一定の引き上げが必要との判断があった」と増額容認の理由を説明した。

 例年、最低賃金改定は中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が引き上げの目安額を地域の経済情勢に応じてA~Dの4つのランクに分けて提示し、各地方審議会の労使が協議する。19年度までは4年連続で年率3%程度引き上げられてきたが、本年度は中央審議会が目安額を示さず、各地方審議会の議論の行方に注目が集まっていた。

 鳥取以外も引き上げを決めた県は近隣県との格差是正を主な理由に挙げた。3円増額の熊本県の審議会関係者は「コロナや7月の水害で県内企業の経営環境は厳しいが、(時給で51円上回る)福岡県との差を埋めるために引き上げた」と語る。

 広島の審議会は8月5日に取りまとめ予定だったが、労使の隔たりが大きく、都道府県の最後となる21日に答申。結論は17年ぶりの据え置きだった。広島労働局の担当者は「最終的には雇用維持の主張に勢いがあった」と振り返る。

 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「九州や中国などでブロック内の格差が縮小した点は評価できる」と指摘。ただ、最も低い秋田や高知といった7県と最も高い東京都は改定後も221円の差があり、格差解消に向けた施策を強化する必要があるとした。

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