中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が26日開かれ、2020年度の地域別最低賃金の引き上げ目安について労使間の議論を始めた。第2次安倍晋三政権は引き上げを推進し、増額の流れをつくってきた。しかし新型コロナウイルスの影響による企業業績の悪化で一転、今年度は大幅引き上げに慎重姿勢を見せる。中央審議会は労使代表と有識者で構成。7月中にも目安を決定する。
「中小企業が置かれた厳しい状況を考慮し検討を進めていくように指示をもらっている」。26日、中央最低賃金審議会の前に行われた加藤勝信厚生労働相の記者会見。全世代型社会保障検討会議で安倍首相が3日「今は官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題」と述べたことを受けての発言だった。
検討会議で3日に配布された資料には「業況感は全ての地域で悪化」「資金繰り状況は過去最大の悪化幅」などとコロナ禍で中小企業が厳しい状況に置かれていることを示すデータがずらりと並んだ。
一方で、労働者の生活の厳しさを示すデータは皆無。労働側の関係者は「引き上げが困難との雰囲気に誘導しようとする意図を感じる。企業だって労働者がいないと回らないはずなのに」と憤る。
大阪府に住む男性(29)はコンビニエンスストアと観光施設を掛け持ちし、家計をやり繰りしていた。大阪府の最低賃金は時給964円。コンビニが同額の964円、観光施設は少し上回る1000円だった。休みは月に1、2回。コンビニで深夜から翌朝まで仕事をした後、数時間の仮眠後に観光施設で夕方まで勤務したことも。月収は15万円ほどだった。
コロナの影響で観光施設が休業になり、代わりに日額1万円のアルバイトを見つけたことで生活が少しは楽になったというが、「将来に備えて貯蓄もしたい。家や車を買っている同級生もいる。最低賃金で働いている限り、かつかつな生活が続く」と話す。
静岡県立大の中沢秀一准教授(社会保障論)は「日本の最低賃金は国際的に見ても低い水準。生活を成り立たせるためには長時間労働をするしか方法はない。人間らしい生活をするためには時給1500円程度は必要だ」と指摘している。