働き方ラボ

オンライン講義の現実と、そこから在宅ビジネスパーソンが学ぶべきこと (1/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 約1カ月遅れで新学期が始まった。本学は全面的にオンライン講義となった。この2週間、実践してみて発見したことを共有しよう。ビジネスパーソンがリモートワークで陥りがちな失敗と重なる部分も大きいと私は考えた。オンラインコミュニケーションの教訓を考える。一言で言うと、思いやりと、余裕が大切だ。そして、ツールはかなり進化しているし、活用の仕方によっては何でもできると言っても過言ではないが、限界にも気づくべきだ。

 意外に疲れるオンライン講義

 オンライン講義が始まって既に2週間が経とうとしている。勤務先の大学では、学生は8月半ばまで入構禁止、職員は出勤日と在宅勤務日が半々となり、教員は研究や教育のためやむを得ない場合を除き在宅勤務となった。週に1、2回、研究室に本を取りに行く他は家にいる。通勤時間が1日1時間は減っているので、楽になったかと思いきや、相当疲れている。なぜか? 保育園が休園で育児が大変だということもあるが、それ以上にオンライン講義である。これが意外に疲れるのである。

 オンライン講義は無観客試合である。事前に収録して、動画や、解説付きの資料を見てもらうオンデマンド型と、その場で双方向のコミュニケーションをとるリアルタイム型に分かれるのだが、いずれにせよ、学生の姿は見えない。ひたすらカメラやマイクに向かって語りかける。無観客試合状態だ。しかも、拡声用のマイクがなく、地声で話すので、気づくと喉が枯れている。喉が痛くてグッタリするので「ひょっとして、新型コロナウイルスに感染したのか?」とすら思ってしまうほどだ。

 「リアルタイム型なら、相手の反応もわかるのでは?」と思う人もいるだろう。おっしゃるとおり、仕組み上はそれが可能だ。しかし、中にはWi-Fi環境がない学生もいるし、「パケ死」「ギガ死」していて通信制限がかかっている学生もいる。仮にWi-Fi環境が充実していたとしても、カメラをオンにする人が増えるとだんだん、動作が重くなり、音も途切れがちになっていく。だから、全員がカメラをオンにしての講義はなかなか難しい。

 反応がわからないまま、すすめるので、学生が必ずしも追いついていない場合や、理解できていない場合もあるし、ウケていない小ネタをひっぱりすぎて「うざい」と思われることもある。もちろん、質問などに対応する時間もつくるので、疑問は解消されるのだが。

 新型コロナウイルスショック前はライブによく通っていたのだが、前座で出てくるバンドの気持ちがよくわかった。反応がない、ファンが少ない状態でベストなパフォーマンスをし続けなくてはならない。盛り上げようとすると、逆に滑ることもある。こんな状態なのだ。結果として身も心も疲弊する。

 一方、学生も相当疲弊していることを意識しなくてはならない。学生に聴いてみると、いつも最前列で講義を聴いている気分でグッタリするというのだ。数コマ続くと疲労はよりたまる。しかも、カメラオンにしないと、仲間がいることを実感することができず、孤独感を味わうことになる。

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