会社員などから将来受け取る給料を債権として買い取り、給料日前に事実上、現金を貸し付ける「給料ファクタリング」の被害相談が相次いでいる。存在はSNSやインターネット掲示板を中心に広がり、業者側は「前借り感覚の気軽な資金調達方法」とアピール。だが法規制がないことを背景に、多額の手数料を要求されるトラブルも目立つ。専門家は「実質的なヤミ金だが、周囲に被害を相談できない人も多い」としている。(杉侑里香)
「手軽で利用したが支払えなくなって…。会社に連絡されたらどうしよう」
2月下旬、大阪府内に住む20代後半の男性会社員から司法書士事務所へSOSが届いた。男性は給料ファクタリングを利用し、月給のうち7万~8万円分を業者に債権として譲渡。手数料を引いた分を先に現金として受け取り、給料日後に返済することを繰り返していたが、やがて資金繰りに行き詰まったという。
5万円前借りの手数料3万円
ただ男性が給料日前に受け取っていたのは約5万円。2万~3万円が手数料で差し引かれていた形だ。金利換算では年率が500%超となり、利息制限法の上限(最大20%)を大きく上回っていた。
ファクタリングとは従来、事業者が取引先への売掛金を債権として第三者に売却し、決済日前に当面の資金を調達する手法だ。法規制がなく、中小企業などで広く実施されてきたやり方だが、これを勤務先から将来支払われる給料に転用し、個人向けに行うのが給料ファクタリング。契約上の金銭の貸し借りではないため、利息制限法や貸金業法などに縛られず、ネット上には「ブラックリスト入りの方でも大丈夫」などとの文言も目立つ。