働き方ラボ

『失敗の本質』おじさんになるな 笑える失敗で“コロナ疲れ”を吹き飛ばせ (1/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 それにしても、新型コロナウイルスである。読者の中にも文字通り「商売あがったり!」という人も多いことだろう。心から同情する。飲食、流通、宿泊など来客が激減している業界は枚挙にいとまがない。自宅勤務の方も、通勤時間は減ったものの、いつもの通りに働けないというストレスも溜まっていることだろう。

 なんせ、暗いニュースが多い。国内外での感染拡大、スポーツや音楽イベントの中止などのニュース、さらには株価の大暴落など、みていて辛くなる。普段は「政治に無関心な人はけしからん」という声も聞こえるが、いざ国難とも言える状況になり政治に注目してみると、与野党ともにどこかズレた、噛み合わない議論をしていてますますイライラする。人にも会いにくい。何かをすると「不謹慎」だと言われてしまいそうだ。中には飲み会のことを「アルコール消毒会」と呼ぶ輩もいるようだが。

 気づけば「コロナ疲れ」が溜まっていないか? 通勤もないはずなのに、精神的にも肉体的にも疲れている人もいることだろう。東日本大震災・福島第一原発事故の際に、何度もテレビやSNSで暗い光景をみて気持ちが落ちたことを思い出す。

 今年は意識の低いことを書く

 やや自分語りになるが、私は今、疲れている。保育園の送迎と、大学への出勤の繰り返しだ。2月下旬から3月に予定されていた講演はすべて飛んだ。アポはガラガラで、とにかく研究と執筆をしなくてはいけない状態だ。これはこれで、貴重な期間である。ただ、毎日、机に向かっているがゆえに、コロナ関連の暗いニュースがどんどん飛び込み、ストレスが溜まっている。世の中全体のニュースもそうだが、自分の大学関連の各種イベント中止などのニュースをみると、学生が可愛そうで悲しくなってくる。そんなことの繰り返しだ。

 毎年、この時期になると「昇進・昇格、人事異動の情報から企業の未来をさぐれ」「職務経歴書を更新しろ」「人材紹介会社に登録してエア転職をしてみよう」など、意識の高いことを書いてきた。今年は、思い切り意識の低いことを書こう。それは「休め」「遊べ」ということだ。「コロナ疲れ」に限らず、ストレスを溜め込んでしまうことはよくない。発散しよう。

 この状況に合わせて、各社でコンテンツの無料サービスなどが始まっている。集英社は人気漫画の『ONE PIECE』を60巻まで無料で読めるようにするそうだ。自宅にこもりがちなときに、なんて嬉しい配慮だろう。いや、新しい読者をつかもうという意図も見え隠れはするのだが。会社員的には23年かけて、主人公が海賊王になれていない実態に、社会の現実を突きつけられて絶句するかもしれないが。

 前回、このコラムでは、こんな時期だからこそ本を読もうと書いた。例えば『失敗の本質』(野中郁次郎他 中央公論新社)などを読み、日本の組織がしてきた失敗から学ぼうと書いた。実は書いたあとで、猛反省した。来月、46歳になる私は、立派な中年であり、おっさん以外の何者でもないのだが…。気づけば「『失敗の本質』を読めおじさん」になってしまっていた。だいたい、『失敗の本質』ほどの名著は、とっくに読んでいる人が多いし、ただでさえ気持ちが落ちている時期に読むと、心がますます暗くなるのである。そして、危機感管理という意味では読むべき本は他にもあり。今さら「『失敗の本質』を読め」と吠えるのは、最高にダサいのである。猛反省した。いや、読んで欲しい本なのだけれども。

 ふと考えた。こういう時期こそ、同じ失敗でも、やや笑えるというか、失笑、苦笑する失敗から学ぶべきではないか、と。ちょうど昨年、Netflixで映像作品化された『全裸監督』(本橋信宏 太田出版)の帯を思い出す。私が買った頃の同作品のコピーは「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる」というものだった。これだけで元気百倍だった。いや、人を見下しているわけではない。ただ、ぶっ飛んでいる人、ぶっ壊れている人、挑戦と失敗を繰り返しすぎる人をみると、人は元気になるものである。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus