教育、働き方など、多様なテーマの著作がヒットしている“教育改革実践家”の藤原和博さん。今回出版した、『100万人に1人の存在になる方法』(ダイヤモンド社)では、将来の仕事人生に不安を持つ人に向け、希少価値の高いキャリアを積んでいくノウハウを惜しみなく披露している。(加藤聖子)
昨今、AI(人工知能)の台頭に困惑しているのは、突出した才能や継ぐべき家業もない普通のサラリーマンだろう。藤原さんはこうした人でも、“キャリアのかけ算”で、希少価値のある人材になれることを提言した。
「まず入社した会社で100分の1を目指すこと。1つの仕事をマスターするには、約1万時間が必要といわれますが、その間夢中になって仕事をすれば1歩目はクリア。2歩目は異動や転職などで、少しでも異なった角度から再度キャリアを形成し、同様に100分の1に。3歩目で経験を生かしながら、自分のテーマに挑みます。100分の1を3回かければ100万分の1。圧倒的な価値が生まれるんです」
本書では“100万分の1”のキャリアを持つ10人の事例を挙げたが、藤原さん自身もまた、キャリアのかけ算で成功した代表例だ。大卒後はリクルートに入社。営業の最前線で、がむしゃらに働いた。今は働き方改革が重視される時代だが、藤原さんは単に仕事時間を短くすることについては異議を唱える。「特に、20代のうちは量をこなすことも重要です。ここでサボると仕事の中で流れる時計がすごく遅くなる。仕事の初動期は、量が質に転化します」
藤原さんにとっての2歩目の転機は、30歳でメニエール病を発症した頃のこと。仕事も営業からマネジメント職へと変わり、37歳でヨーロッパに留学もした。「2歩目は異動、転職、主婦として子育てなど、前と少しでも違う仕事なら何でもいいんです。同じ仕事の異動や転職では付加価値はつきません。そうした機会を待たずに海外や被災地にボランティアで行くなど、自分自身で戦略的にモード変換をしてもいいですね」