働き方ラボ

渾身のスピーチや企画書がまさかの“空回り” 伝わらない理由はそこにある (1/2ページ)

常見陽平
常見陽平

 「春眠暁を覚えず」というフレーズを思い出してしまった。孟浩然の詩『春暁』の冒頭だ。10代の頃、国語の教科書で読んだ。言葉の広がり、醸し出す空気感が素晴らしい。

 冗長でマンネリ気味

 もっとも、この美しい句とビジネスパーソンの現実はズレている。「働き方改革」が叫ばれるが、ゆっくり寝ていられるわけもなく、早起きして家を出て通勤ラッシュの末にたどり着いた職場では、何かと眠くなる瞬間が多いものだ。年や期の変わり目で、なにかとイベントが多く、人のスピーチを聞く機会が多いからだ。しかも、たいていはマンネリ化しており、つまらない。

 この手の話は長くて、眠くなる。厳密には、「長く感じる」ものである。冷静に時間を測ってみると数分であっても、「長く感じる」ものなのである。話が冗長である上、つまらないからだ。

 眠くなるのは、スピーチだけではない。社内外から届く企画書もそうだ。4月以降になると、新人営業担当者や、異動したての人の企画書があふれかえる。たいていは自己満足で、ダラダラと長い。しかも、どこかで見たようなもので、つまらない。なんせ、役に立つ提案になっていない。

 春は採用の季節でもある。新卒の就活も、4月入社に向けた転職活動も盛り上がる。たくさんの履歴書が届くが、残念なものも多数だ。これまでの人生で1万枚近いエントリーシートを読んできた。たいていは「会いたい」とは思うものではない。「入りたい」という愛に満ちあふれているが、あまりに一方通行でストーカーのラブレターのように見えてしまう。

 気鋭の電通マンがノウハウ披露

 一方、「この履歴書は伝わらない」とバッサリ斬る人事も同じような失敗をしている。仕事柄、合同説明会などで会社説明のプレゼンを聴く機会が多いのだが、取引先向けの資料をそのまま利用し学生向けに説明するので、職場としてまったく魅力を感じない企業が多数という状態になってしまう。わかりにくいプレゼンに対して熱心に食いついている風に装わなくてはならない学生もかわいそうだ。

 そういう私の原稿も、すでにダラダラと長くなっており、説得力がまるでなくなっている。さて、どうすればいいのだろう? ヒントになる本が登場した。『言葉ダイエット』(橋口幸生 宣伝会議)がそれだ。著者の橋口幸生氏は大手広告代理店電通のコピーライターである。ギャラクシー賞、グッドデザイン賞、ACC賞ゴールド、スパイクスアジアなど、数々の賞を総なめにしてきた才能の塊のような彼が、そのノウハウを私たちに惜しげもなく開示してくれる有り難い本だ。

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