大阪市東淀川区の民家で今月、住人女性(74)が複数の男に襲われ、現金約40万円を奪われる事件があり、大阪府警捜査1課が強盗致傷容疑で少年(18)を逮捕し、少年が「(共犯者と通信アプリの)テレグラムを介して知り合った」などと供述していることが23日、捜査関係者への取材で分かった。このテレグラムは、高度な暗号化技術で通信内容が保護され、メッセージが消去されると復元は困難とされる。秘匿性の高さから、特殊詐欺グループなどが犯行を指示する際に使うことが多いが、今回のように人命が危険にさらされるケースもあり、府警は警戒を強めている。
特殊詐欺などの犯罪集団が近年、実行役を募るのに使う会員制交流サイト(SNS)。例えばツイッターでは、検索目印となる「#(ハッシュタグ)機能」で「#裏バイト」「#運び」などと検索すると、「受け出し案件。必ず稼げる」といった特殊詐欺の「受け子」募集とみられる投稿がいくつも見つかる。
こうして集めた実行役の少年らに指示を出す際、よく利用されるのがテレグラムだ。一定時間が経過すると、自動でメッセージの履歴が消えるようにする機能があり、一度消去されると「復元は不可能に近い」(捜査関係者)という。
もともと知り合いではない実行役でも、テレグラムのグループ機能を使って一斉に指示を出したり、互いに連絡を取らせたりすることで犯行グループを結成することも可能。指示する側にとっては、実行役が逮捕されても人間関係などから捜査の手が及ぶ恐れも少ない上、メッセージなどの証拠が残りづらいという利点がある。
特殊詐欺のほか、暴力団組員同士のやり取りや薬物の密売などに使われることが多いが、直接身体に危害を加える犯罪を指示される場合もある。
犯罪者の心理に詳しい新潟青陵大大学院の碓井真史教授は「SNSや通信アプリによって犯罪者が簡単に集団になれる非常に危険な構図だ」と指摘。捜査幹部は「身近なツールを使って募集されるため、軽い気持ちで凶悪事件に手を染める若者も多い。犯罪集団はそうした心理につけ込み、実行役を使い捨てにしている」と分析し、注意を呼びかけている。