SankeiBiz読者のみなさんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第94回はマレーシアの系航空会社で乗務する金子あすながお送りいたします。
かつて見たことのない「0時間」
私の在籍する会社では「turn around(宿泊を伴わない乗務)」「night stop(宿泊を伴う乗務)」ともに中国路線が多く、日本人だからといって日本線だけに乗務するという勤務体制ではありません。そのため、中国で新型コロナウイルス感染症の流行が本格化した2020年1月後半、旧正月前後には、すでに減便や欠航が相次ぎ、2月に入った頃には毎日のように「roster change (スケジュール変更)」の連絡を受けていました。
そして私が住むマレーシアでは3月半ばに、生活に必要最低限の行動のみが許可される都市封鎖が始まり、そこから約2カ月半はかなりの厳戒態勢でした。その後、緩和はされたものの、感染者数は日本と比べはるかに少ないのにわりとしっかりと対策・対応をとっていて、日本とはかなり温度差があるように感じました。
弊社も、マレーシアの都市封鎖開始後すぐに全便運航停止となりました。私たち外国人CAも、「マレーシアに残るか、無給休暇を取得して母国に一時帰国するか」の選択肢が与えられ、私は日本への一時帰国を選びました。
こうして1月までは100時間もあった飛行時間が、数カ月の間に今まで見たこともない「0時間」となったのです。
その後、私たちCAは、通常のCA業務ではなく、マスクや防護服などを大量に乗せた国際カーゴ便、海外に残されたマレーシア人を帰国させるためのレスキュー便での乗務にあたりました。
加えて「乗務がない間にできることを!」ということで人身売買や絶滅危惧種の密輸についてなどのeラーニングによる課題が出されたりもしました。
9年ぶりの日本時間、おうち時間、家族時間
日本に帰って来て、今までの生活ではありえなかった「Stay Home」と「自炊」が完全に習慣化し、私自身が一番驚いています。
現在の会社に入社し、マレーシアでの生活と勤務が始まってからは、有給休暇や毎年の家族旅行は全てマレーシアか第三国で過ごしていたため、日本滞在は最長でも(冠婚葬祭のための)1回5日間程度。日本に帰ってくると毎回限られた時間の中で会いたい人も食べたい物も沢山ありすぎて大忙しでした。
今回の一時帰国は、先の見えないものです。帰国後すぐに緊急事態宣言が出され自粛生活に突入してしまったので、こんなに長く日本にいるのに友人には自由気ままには会えず、大好きな食べ歩きもできずに実家でのおうち時間が始まりました。