第14回 提供している価値をミクロの目で見る
「9月26日にソフトウェアの新バージョンが発表されました。これをインストールすることで、あなたの持っているもので最新の機能を楽しむことができます」
これは、スマホやパソコンの話ではありません。電気自動車メーカーとして認知されている「TESLA(テスラ)」の話です。テスラの車はソフトウェアのアップデートにより、走行距離が伸びたり、加速性能がアップしたりしています。従来の考えですと、車ごと買い替えなければ実現しなかったことです。
ガラケーからスマホへと移行した時と同じことが起きています。つまり、ハードとソフトが分離し、ソフトのほうで実現できる範囲が広がったのです。ソフトウェアの充実度が大事なのだと。
スマホのように、自分の車にいろいろなアプリをインストールすることで車自体を買い替えなくても色々な機能が楽しめるようになる。おそらくそう遠くない時期に実現するでしょう。
「ソフトウェアも大事かもしれないが、外観などで個性を出すことも大切だ」
既存の自動車メーカーはこのように考えるはずです。もちろん個性を大事にする層もいるでしょうが、「安く移動できればいい」「みんなと同じでいい」という層のほうが圧倒的に多いことはこれまで様々な分野で(とくに生活に必要なものに関して)明らかになっています。残念ながら「ものづくり」、つまり「ハード」を作ることに関しては必要とされるプレイヤーの数がかなり限られてきてしまっているのです。
ハードとソフトの分離でSaaSが生まれる
いままでひとかたまりとして考えられていたサービスが、様々な理由で「分解」され、それぞれに強みをもったプレイヤーが参入してくるというのは多くの分野で見られるものです。
代表的なものは、ハードとソフトの分離です。クラウド型の営業支援・顧客管理システムを提供するSalesforce(セールスフォース)などに代表されるSaaS(Software as a Service)は、インターネットを通じた適切なアップデートやカスタマイズという付加価値により「ソフトウェアを自分で購入したほうがなんとなく安心な気がする」「ソフトが箱として届かないと買った気がしない」という価値観を押しのけています。かっこいいパッケージ自体を所有するという価値観の代わりに、適宜アップデートというサービスを提供しているのです。これは箱&CD-ROMと中のソフトが一体となっていた時には考えられないものでした。