デザイナーは発想のプロセスまでをお客さんに説明しなくてはいけないシーンがあり、そのために自分の生活を営業上語ることに馴れてしまったとも想像できる。
ライフスタイル自体が営業ツールになっているわけだ。だから「怠惰」は売りにしづらい。だが、その怠惰こそがクリエイティブの源泉だと認められたら、もっともらしい「活発ぶり」を目にすることも減るかもしれない。
そう、どうでもいい秘訣を大文字で訴えかけられるのは、もうウンザリなのだ。もしかしたら、医学的根拠に乏しいサプリや健康法を無理やり勧められるよりも、もっとウンザリする。
それもこれも、そういうマーケットがあるからだ。「具体的にどうすれば、事例のような成果を得られるのですか?」という問いが多すぎる。
その手の問いに答えるばかばかしさを感じながらも、心のなかではイライラとしながら答えてあげる心優しき人々がいるから、この間に1つのキャッチボールが成立しているかのような勘違いがある。
標準化信仰が底流にはあり、ある手順を踏まえれば、それなりの結果が得られると思っているのである。だからあえて強調したい。怠惰な態度が、新しい道を切り開く、と。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。