話の肖像画

商業には本来、人をひき付ける力がある ファストリ・柳井正氏(16) (1/2ページ)

 服で世界を変えていく

 〈バングラデシュの首都ダッカ近郊では2013(平成25)年、商業ビルが崩壊して1千人以上の労働者が犠牲になる事件があった。ビルの中には縫製工場もあり、過酷な労働環境の実態が世界に伝わり、国連の専門機関が改善の必要を指摘した〉

 ユニクロは全ての商品の生産をアジアの工場に委託し、自社工場は持っていません。日本の技術者や生産管理者約460人が、海外6カ所の生産事務所に常駐しています。主要な取引先工場の従業員から直接相談を受け付ける制度を上海やダッカなどに2017(同29)年、開設しました。深刻な人権侵害に対して、取引先工場が是正勧告に応じなければ、社内の人権委員会で審議を行って対処します。

 〈平成29年には取引先縫製工場、昨年11月からは、それまで「企業秘密」としていた主要な素材工場のリストも公表した〉

 やはり、大企業に対する不信がありますよね。規模が大きいほど、「こいつら何か悪いことやっているんじゃないか」と。欧州などの企業はそうした見方に対応する仕組みになっている。企業は、ビジネスマンのための会社ではなく、社会のためにある組織だという考え方です。そのために、企業には情報開示など透明性も求められる。行き過ぎた物質主義から戻ろうとしている。日本についても、人間中心の社会になっていく過程にあるのだと思います。

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