政府が6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」の策定過程で最も議論が盛り上がったのが、企業がその額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする「最低賃金」の引き上げペースだ。政府・与党でさまざまな意見が交錯した中、具体的な数値目標の明記は見送りつつ、引き上げペースの加速に期待を示すなどして落としどころを見いだした。7月上旬には厚生労働省の審議会で令和元年度の引き上げ額の目安をめぐる労使の議論が始まったが、どのように着地するか注目される。
「成長と分配の好循環の継続・拡大に向けて、最低賃金の引き上げは非常に重要だ」。7月4日、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の議論がキックオフを迎え、出席した根本匠厚労相はこう述べた。
令和初の国政選挙となった今回の参院選でも、与野党はこぞって最低賃金の引き上げを公約に盛り込んだ。書きぶりは各党で異なるが、全国加重平均で1000円(時給)もしくはそれ以上を目指す姿勢は共通で、政治的関心も高い。
最低賃金は過去3年間、年率3%程度の引き上げが続いた。平成30年度は全国加重平均で874円だ。
骨太方針は、最低賃金の引き上げについて「より早期に全国加重平均が1000円になることを目指す」とした。具体的に何%を目途にといった数値目標は書き込まなかった一方、「より早期に」としたことで、過去3年間の年率3%程度を上回るペースでの引き上げに期待をにじませた形だ。