ミラノの創作系男子たち

プラグマティズムを疾走する副業カメラマン ソーシャルメディアの寵児に (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 カメラの心得はなかったし、特にアートに興味があったわけではない。たまたま、およそ10年前に親からのプレゼントでカメラを手にした。バカンスの最中に女の子をモデルに遊びとして撮影をはじめたら、またたく間にソーシャルメディアで注目されるに至った。

 今やウェブ上で世界的に影響力のあるカメラマンランキングの11位にもなった。イタリア人としては1位だった。フェイスブックのページは126万以上、インスタグラムはおよそ44万のフォロワーがいる。

 しかも、それは彼、4歳の息子をもつ43歳の父親であるエマヌエレ(エマニュエル)・フェラーリの副業だ。

 本業はソフトウェアのプログラマーである。イタリアのエネルギー企業・ENIの財団のイントラネットやウエブサイトの仕事をしている(前々回、紹介した「科学の伝道師」の同僚だ)。カメラマンとしての仕事は平日の夕方以降か週末である。たまに有給休暇をとって撮影することもあるが、基本、二足の草鞋の片方に影響しないように動いている。

 それでもサッカーのユベントスの大ファンとして、ホームゲームをスタジアムで必ず観戦する。冬の寒い日でも1人で身体が熱くなる。ユベントスのホームはトリノでミラノから100キロ以上はある。

 「なに、クルマでの往復時間を含めて4時間あれば大丈夫。信者が日曜日に教会に行くのと同じなのだよ。宗教のようなものだ。日曜の午前中に撮影をして、午後にトリノで試合をみて、夜に写真の整理をするとかね」とアクティブだ。

 チャンピオンズリーグで国外で開催される試合があるなら、それもなるべく出かける。エマヌエレのスケジュールの優先順位は、ユベントスの応援が筆頭にくるのである。二足の草鞋よりも上位にあるのだ。

 このように日々疾走する彼の人生は、「実現性あるそれなりに難しい目標をたて、如何に最短でそこに到達するか」とのプロセスを楽しむことである。

 そうしてゴルフもシングルプレーヤーになった。

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