そんな幻の名著は、元号が令和に変わる直前の今年4月に復刊。インターネットを中心に「あのユダヤの商法が復刊」と話題となり、即重版されて5万部を上積みした。特に藤田さんの故郷、大阪での売れ行きが好調だという。
編集者の山崎実さんは、「終身雇用の崩壊や非正規雇用の拡大など激変した労働環境を生きる若者に、稼いで勝ち抜く力を与えたい。その答えが商法の中にある」と復刊の狙いを語る。
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半世紀ほど前のビジネス書が、なぜ注目されるのか。現在、投資ビジネスや情報産業などがもてはやされる対し、「ハンバーガーで日本の食文化を変えた藤田さんの商売は、目に見える実体経済。経験値で語る生の言葉が響くのでしょう」と山崎さん。
財布を握る女性を相手にした商売や、食品店や飲食業など口に入れるものを扱う商売はもうかると説く「女を狙え、口を狙え」の教えは、「手垢にまみれているけど、揺るぎない真理ですよね」。タイムマネジメントの大切さを説いた「時間も商品」「不意の客は泥棒と思え」や、「契約は必ず守れ」「商売に『きれいな金』『きたない金』はない」など、商売の定石が書かれていることが大きな特徴だ。