働き方

早く帰って、ちゃんと休む 絶対に100食しか出さない行列店、その働き方 (2/4ページ)

 死ぬ前にはこの一杯を食べたい。このステーキ丼を独り占めしてしまうのではなく、みんなにも食べてもらいたい--。

 そうやってはじめた佰食屋は、「すき焼き専科」「肉寿司専科」と合わせて3店舗を構え、いまでは年商1億円を超え、従業員は30名を数えるほどになりました。そして、その全員が月に一度も残業することなく、退勤することができます。

 わたしの名前は、中村朱美と言います。

 京都生まれの京都育ち。生粋の京都人です。と言っても京都市の隣、亀岡市の出身なので、「亀岡は京都人とちゃう」と言われてしまいそうですが……!

 佰食屋をはじめる前は、わたしも夫も、まったく別の業界で仕事をしていました。夫は不動産業、わたしは広報として専門学校に勤めており、学生時代も含めて、飲食店に勤めた経験はほとんどありませんでした。

 インセンティブは「早く売れたら早く帰れる」

 「飲食店」と聞くと、「勤務時間が長い」「土日は休めない」「ギリギリの人数でお店を回している」といった大変なイメージを持つ人は多いでしょう。わたしも、同じイメージでした。

 飲食店が儲かるのは土日です。でも、従業員からすれば平日より、お客様がたくさん来られる土日のほうが大変です。それなのに、土日に働いたからといって給与が高くなるわけではないし、閉店間際にお客様が来られても、「また今日も帰る時間が遅くなる」としんどくなるだけ。

 つまり、どれだけ頑張っても対価が得られにくいのです。

 これって、おかしくないですか?

 長時間労働は当たり前、慢性的な人手不足。でも、どうせやるなら、自分が嫌なことを従業員にはさせない会社をつくりたい。

 会社員なら通常、セールスとしてたくさん売ればインセンティブがつきます。だから同じように、飲食店にもなにかインセンティブのような「頑張ったら頑張ったぶんだけ自分に返ってくる仕組み」をつくれないだろうか。

 そこで決めたのが、「1日100食」という上限でした。1日に販売する数を決めて、「早く売り切ることができたら早く帰れる」となったら、みんな無理なく働けるのではないか、と思ったのです。

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