精神障害者も法定雇用率に含むよう、昨年4月に改正障害者雇用促進法が施行されて1年が過ぎた。作業しやすいよう製造工程を改良、体調管理への配慮、障害者雇用のための特例子会社の設立…。企業はさまざまな取り組みを始めた。一方、事業規模の小さい中小企業などでは状況は厳しい。働きづらさを抱える人たちに企業はどう向き合うべきか、現場を訪ねた。
「安心して仕事」
機械音が鳴り響く工場内。従業員たちが、エアコンの部品や油圧部品の組み立てに取り組んでいた。作業台に並ぶ大小さまざまな部品は、トレーごとに整然と用意されている。作業忘れなどがあったらトレーに部品が残る仕組みで、ミス防止になる。「安心して仕事ができます」。従業員の女性(38)は話す。
ダイキン工業が障害者雇用を目的に平成5年に設立した「ダイキンサンライズ摂津」(大阪府摂津市)。当初は十数人だった従業員は今は約180人。そのうち約160人が障害者だ。精神障害者も義務化前の18年に初めて採用して以来増加を続け、現在は50人を超えた。
全体で退職者は年平均約4人と高い定着率、売上高は初年度の1億円強から約20倍に伸ばすなど業績も好調。取り組みを学ぼうと、年間千人以上が視察に訪れる。
「職場に来ると、病気を忘れて過ごせる。働くことができるのがうれしい」。前出の女性従業員は笑顔をみせる。中学生のころ統合失調症と診断され、学生時代は幻聴のため家族や教師、友人に暴力をふるうこともあった。
入社前はファストフード店などでアルバイトをしていたが、覚えが悪く同僚や客によく叱られた。周囲に障害を伝えていなかったこともあり、長続きしない。「障害を理解してくれる場所で仕事をしたい」と入社したのがサンライズだった。入社してすでに約10年。生き生きと働く。
同社では、バリアフリー設計や聴覚障害者のためのランプ表示の活用、視覚障害者のためのパソコン画面の改良などを続けている。「仕事を段階的に覚えてもらいやりがいも提供する」(渋谷栄作社長)ためだ。