今日から使えるロジカルシンキング

なぜ事実と意見を分ける必要があるのか 子供にゲームをおねだりされたら? (1/3ページ)

苅野進
苅野進

第2回 事実と意見を分ける<基本>

 会議でもっと効率的に意思決定ができたら…。上司やクライアントをもっとスムーズに説得できたら…。仕事でこんなふうに思ったことはありませんか? この連載では、子供にロジカルシンキングを教える学習塾ロジムの主宰・苅野進が、SankeiBiz読者のみなさんに、ビジネスパーソンにとって重要なスキルであるロジカルシンキングの基本を伝えていきます。今回のテーマは「事実と意見を分ける」です。

今日は30度ある。とても暑いな

 「30度ある」は事実で、「とても暑いな」は意見ですね。「これを見分けましょう」という練習問題は大人なら難しくないですね。

 事実とは、「このリンゴは赤い」や「きのうの売り上げは昨年より良かった」など誰が見ても客観的に正しいか間違っているかの判断が可能なものです。(「赤い」に個人差があるなど細かい問題は残りますがここでの議論は割愛しましょう。)ひとつ注意が必要なのが、事実には「正しい事実」と「間違った事実」があるということです。「現在の日本の首相は夏目漱石である」は事実ですが「間違った事実」です。これに対して、意見は「とても暑い」や「とても人気である」など見る人によっては判断が異なるものです。

 このような指導は小学生の頃からよく受けるものです。ロジカルシンキングでも非常に重視されています。実社会で「どちらが事実? 意見?」などという問題に出会うことはありません。いったいなぜでしょうか?

 それはしばしば私たちは意見にすぎないものを事実のように見せかけて、「根拠」として使ってしまうからです。

見せかけの「事実」が招くリスク

 「最近の若者は文字を好まないので、映像で訴求すべきだ」というように、あくまで意見にすぎない「最近の若者は文字を好まない」をあたかも事実のように使ってプレゼンしてしまうのです。「本当に最近の若者は文字を好まないのか?」を意見として捉え、しっかり検証しなくてはいけないにも関わらず、事実として検証が要らないと考えてしまいます。目の前の交渉相手は説き伏せることはできても、トラブルは抑え込むことはできません。意見を事実のように使ってしまうと、グラグラした土壌の上に何の対策もせずに家を建てるようなものでいつか必ずトラブルが発生するのです。

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