女性活躍・ハラスメント規制法が29日の参院本会議で可決・成立、パワーハラスメントが法規制されることで企業は今後、取り組みを本格化させる。問題は指導の範囲との区別で、パワハラかどうか判断に迷う“グレーゾーン”の扱いだ。放置すれば生産性の低下を招く恐れもある。
「社内でも何がパワハラに当たるのか、認識は曖昧な状況にある」。企業などの教育研修事業を手がける「インプレッション・ラーニング」(藤山晴久代表)が4月、東京都内で開いたパワハラ・セクハラの対策セミナー。参加した商社の女性(49)は職場が抱える課題をそう明かした。
女性の会社では近年、管理職側と若手社員の間で意識の隔たりが目立つ。管理職が「仕事は見て覚えるもの」「厳しく育てるのが当たり前」と思っても、若手が反発を抱くことは少なくない。管理職が指導に消極的になれば、人材育成に支障をきたす。「互いのギャップをどうやって埋めていけるのか、その方法を探している」と女性は語る。
厚生労働省が平成28年、企業に実施した調査(4587社が回答)では、「パワハラが職場や企業に与える影響」(複数回答)として、「職場の雰囲気が悪くなる」「従業員の心の健康を害する」が約9割に。約8割は「従業員が十分に能力を発揮できなくなる」「人材が流出してしまう」と回答、約7割が「職場の生産性が低下する」と答えた。
一方で、管理職や人事担当者からは「社員の認識に差があり、単なる仕事の不満もパワハラと主張される」「業務上のやりとりで声を荒らげることもパワハラに当たるのか」などと疑問の声が上がる。「対策を導入したいが、指導しにくくなるのではないか」との懸念も少なくない。
パワハラの判断のポイントとなるのは「業務上の適正な範囲かどうか」だ。厚労省はパワハラになり得る行為として、(1)暴力などの「身体的な攻撃」(2)人格否定などの「精神的な攻撃」(3)無視など「人間関係からの切り離し」-など6つの類型を示している。