万葉集出典の「令和」には日本のあり方を改めて考えさせられる。少子高齢化で生産年齢人口の減少が進み、生産性を高める「雇用システムのアップグレードとハイブリッド化」がキーワードとなりそうだ。
国民が日本経済に対する自信を高めた昭和に対し、バブル崩壊から始まった平成は日本型のシステムから欧米型への転換が進んだ。雇用面でも終身雇用、年功制、企業内組合という日本型が崩れ、雇用流動化が進んだが、就職氷河期の世代が中高年にさしかかった平成後半、生産性の低下という副作用を生んだ。
日本型雇用はいわゆる“普通の人”が、組織に対する帰属意識を背景に高いモラルを維持して働けるという特徴があった。だから高品質のサービスができ、日本の強みになっていた。令和では、バブル崩壊をきっかけに崩れていった日本型雇用をもう一度、見直していくことになる。
ただ一方で、かつての仕組みをそのまま取り入れることは難しい。中国をはじめとする新興国の台頭などもあって国際競争は厳しさを増しているからだ。
提案したいのが「日本と欧米のハイブリッド型」。若手のときは日本型の安定雇用で仕事を広く経験し、何かを成し遂げていく成功体験を培っていき、職業人生の後半からは自分の向き不向きを見極め、特技を磨いて市場で求められるプロになる。日本型の弱点である「個」の弱さを補い、競争を勝ち抜く人材を作る。
重要なのは、時代の変化で消えていく事業や企業は救わなくとも、人材へのサポートは切らさないこと。どんな技能を持った人材が必要かは情勢で変化するので、常に機会を与えるようにする。人材を放置すると不満が生まれ、経済だけでなく社会が不安定化し、ポピュリズム(大衆迎合主義)を生む土壌にもなる。