日本で働く外国人の数は昨年10月時点で146万人に達し、過去最多を更新した。地方も大都市も深刻な人手不足だが、外国人の人気は賃金が高い東京、大阪などに集中。介護施設で働く人を地方で雇い育てても、都市部に流出する状況に歯止めがかからず、地方の危機感は強い。言葉の壁や労働条件の改善など課題は山積し、企業は人材定着に知恵を絞る。
育成1人1000万円
ベトナム人のファム・バン・ズイーさん(30)は3年前、経済連携協定(EPA)に基づいて来日した。青森県むつ市の特別養護老人ホームで働きながら、介護福祉士の資格獲得を目指す。
「ベトナムにはない介護の技術が学べる上に、高い給料をもらえる。日本に来てよかった」と満足そうに話す。
しかし、運営団体の中山辰巳専務理事の表情はさえない。2008年以降12人の外国人を介護士の国家試験に合格させたが、県内で働き続けている人はゼロ。資格取得後に東京や大阪、その周辺の都市部へと去って行った。
給与や研修費、住居費などで育成費用は1人当たり1000万円を超える。しかし「手塩にかけて育てても、若い彼らの『都会で暮らしたい』という気持ちには勝てなかった」とこぼす。都市部の高い賃金水準が、外国人には魅力的だ。
新資格1年持たず
各地で進む深刻な人手不足に対応するため、政府は外国人労働者の受け入れ拡大に動く。高度専門職に限っていた従来施策を変更。新たな在留資格を設け、単純労働分野にも広げる。4月から5年間で最大で約34万5000人を受け入れる予定だ。
だが、人手不足解消の効果を疑問視する声は少なくない。ある地方の介護施設の幹部は「いくら外国人材を受け入れても都会に偏るだろう。EPAなら国家試験の受験資格が得られるまで少なくとも3年間は働いてくれたが、新設の在留資格では、地方で就職しても1年と持たない」と話す。
企業も外国人の定着に必死だ。人材派遣会社のテクノ・サービス(東京)では、派遣先企業になじめるようにと17年から群馬県太田市など工場が集積する地方都市の営業所に、日本語が堪能な外国人スタッフを配置した。